昭和の風景にしばし見とれた僕だ。貼ってあるポスターは知らない歌手の方が多いが、なんとなく演歌のポスターってのは郷愁を感じる。
僕らが愛した昭和歌謡には演歌も含まれていて、大人のための曲も渋々聞いていた。いや、当時はあまり大声じゃ言えなかったけど中には大のお気に入りの曲があり、テレビで熱唱する演歌歌手たちに集中していたなんて諸氏も多いだろう。桑田さんが去年放った問題作であり名曲の『ヨシ子さん』で、演歌はいいなと歌っていたのも昭和を生き抜いた彼ならではのセリフ(歌詞)である。
ここは浅草の裏通りで見つけたレコード店だ。今も演歌歌手はこうした店でキャンペーンを開き、握手をしながらCDを売る。規模の違いこそあれ握手は肝にしているアイドルもいるのだから、ビジネスモデルの根っこはつながっている。
俺たちにとって演歌の仕入れ元はブラウン管であり、『ザ・ベストテン』がずいぶんと押し込んでくれた。また、暮れになると今は激減した種々の賞番組から名曲たちが流れて惚れ込み、極め付けは紅白で聴く。大晦日は同じ曲を2度聞くのがあたり前田のクラッカーだった。そうして育ったことをありがたく思うおっさんだ。
狙い撃ちで好きな系統やジャンルばかりを抽出できる。便利さの反面、僕らが演歌を聞いたような雑種な感覚が育たない。我慢しているうちにいいものに感じていくことってのは音楽に限らずよくあることで、そうした我慢から感性を磨けたことは幸せだと思っている。まあ、それ以上にスピードや便利さの恩恵が現代にはあるから、とどのつまり大差ないのかもしれない。握手で売るというビジネスモデルが変わっていないのもなんだか面白いですなあ。
宮田レコードの前の道、これでも「浅草中央通り」なのです。