浅草が好きだ。

生まれ育った実家から浅草は徒歩だと少々遠いものの、チャリンコ圏だった。家族で出かけることも多く、今も続く大黒屋で天丼を食うのが何よりの楽しみだった。その浅草と僕は不思議な縁で繋がっている気がする。

人を介して店舗開発の仕事に携わった。企画会社勤務から自分で会社を作るブリッジとなった仕事で、大きなスペースに飲食店を開発せよというミッションだった。結果的に、いくつも作った僕のプランが採用されることはなく、ギャラ泥棒のような結果になってしまい無念も残っているが、今思えばいい経験にはなった。

これからわずかな時を経て、現在も付き合いが続き『浅草秘密基地』の舞台となっているショットバー『フィガロ』を友人より紹介してもらった。すっかり気に入ったものの、まさか毎週出入りすることになるとは、もちろん思ってはいなかった。紹介してくれた方がここの常連で、僕をバンドマンだと来店してくる常連たちに言いふらしてた。その中の1人が、だったら家からギターを持ってくるから歌ってくれと言われて歌ったのがキッカケになり、その後ここで歌わせてもらうようになったのである。1991年のことだった。改めて振り返れば、随分と長いこと続けてきてものだ。

写真はそんな浅草で見つけた名店『水口』のいり豚なるメニューである。ケチャップとソースとカレーを感じる不思議ながら昭和な味にいつも感激する。この店こそ浅草らしい浅草の宝だ。夕方になると近所のおっちゃん達がたむろするように次々と来るのがよい。明るいうちから呑んでいるおっちゃんもたくさんいる。食堂を名乗っているが堂々の居酒屋だ。アジフライなどの揚げ物は絶品で、ぬか漬けやポテトサラダなんかも絶対に外せない。どんな入手ルートを持っているのかマグロのブツもとんでもない上物を出す。長いこと浅草と親しんできたのに、ここを知ったのは最近なんだから奥が深い。これだから浅草通いはやめられず、これからも僕は愛し続ける。

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