この国を憂いた熱き情熱の痕跡。

明治維新から150年ということで、全国各地でさまざまな催しや施設での特別展、また今年の大河『西郷どん』もこのメモリアルイヤーを盛り上げるはずだ。司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』を読破して以来、幕末ものを好んで読んできた僕にとってはうれしいばかりで、できるだけ出かけたいものだ。

先日出張の際に大阪の適塾に出かけてきた。ここは緒方洪庵が開いた塾で、オランダ医学を教えていた所だ。評判を聞きつけた優秀な若い才能が続々集まった。緒方先生の人格と勤勉で熱き若者に、うねる時代がふりかかってごった煮のような状態になり、結果幕末史に名を残す多くの人物を輩出している。現在、『西郷どん』を賑わせている橋本左内やこれから登場して騒ぎを起こすだろう、大村益次郎や福沢諭吉、大鳥圭介などなどビッグネームが塾生として名を連ねる。

当時の建物が燃えておらず、修復や修繕を繰り返して重要文化財として大阪のビジネス街のど真ん中にある。そこだけ明治維新前にタイムスリップできる不思議空間でもあるのだ。

長い時間見入ってしまったのが写真の柱だ。無数の刀傷が刻まれている。この柱がある部屋はここに通って住み込みで学んだ大部屋だそうで、激論の末こうして刀傷がついてしまったとのこと。激しい情熱は国のいく末に向かっていたのだろう。その上で意見の相違がこうして残されているのは、平和ボケした僕の心を打ちまくる。自分でなく国の将来に熱くなった若者たちからの、今となってはこの柱はメッセージとも取れる。

たった150年前のこと。維新に向かって日本中の若者たちが血を流し命をかけて今の日本の基礎を築いた。新政府にも幕府にも正義と信念があり、それだから激しくぶつかりながら沸点へと向かったのだ。感謝の気持ちを強めることができるここ大阪適塾へ、連休の方は出かけてみてはいかがだろう。この柱の向こうにいる志士たちと、しばし対話を楽しむことをお勧めする。

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