今年、全日本ロードレースの最高峰クラス、JSB1000に参戦することになったレーサー渡辺一樹とはもうかれこれ5年の付き合いになる。弟、息子、良き友、ライバル、ファン、仕事仲間、etc。これほどいろんな感覚が絡み合う男は他に見当たらない。
カワサキと契約できて最高峰クラスで参戦するようになったのが2013年で、バイクイベントでトークショーの仕事をご一緒するようになった。やがて、我が社とカワサキとで共催するイベントのレギュラーゲストになった。イベントのトークショーのクオリティを少しでも上げようとするから深い話を繰り返し、前述のような感覚へと繋がっていったということだ。その彼が日本を飛び出して、あえて苦しい道を選んで臨んだのが去年のワールドスーパースポーツというクラスだった。結果が出せずにきっと苦しんだことだろう。そんな厳しい1年を経て、今年は国内レースの名門中の名門チーム、ヨシムラから参戦することになった。国内のファンにとっては緑色だった彼の赤への変身は興味深いところだろう。
一昨日から始まった『東京モーターサイクルショー』でトークショーを行っていて、昨日その合間に話をすることができた。「去年の1年はきっと大きなプラスだよな」と、成績こそ振るわなかったものの讃えた。レーサーが勝ちにいくというのは様々な要素が絡み合ってのものだ。その中で、メンタルは最後の最後のところで勝利の女神を微笑ませる。これは何もレーサーに限ったことじゃないが、死と隣り合わせの競技なのだからなおさらである。
カワサキの全日本参戦ライダーとしての一昨年の最終戦は、転倒車に巻き込まれての大クラッシュだった。あれから時を経てもうあと2週間を切った全日本に復活する。勝ちにいくにはまだ仕上がりは遠いかもしれないが、マシンを作り込むセンスは全日本のライダーの中でも抜けた力を持つ彼だから、早々に上位に食い込んでくることを期待したい。今年はライダーの粒が揃っているのと、レース数が8から13に増えたことも手伝ってハイレベルでスリリングな展開が増えるはずだ。そんな中で彼の参戦は大きな楽しみである。
昨日はトークショーをファンの気持ちで楽しませてもらった。舞台から近い距離で、目が合うとなんとなくこっぱずかしいから彼を見ることなく聞くに徹していたのは、それこそ複雑な感覚ゆえだな。今日は遠くから見守ることにしよう。今日のヨシムラでのステージは12時と15時を予定しているから、興味のある方はぜひっ。