3世代カラオケ。

先日、大先輩であり、僕にとっては仕事と人生の師となる存在の方の家を訪ねた。もう20年近くなる彼との付き合いからは、視野を広く持つことの素晴らしさを教えてもらった。出張で近くに行く時は出来るだけ時間を作ってもらい、ご教授いただいている。いつも通り静岡県の掛川駅で彼を待っていた。すると車で来て「今日は家で呑もう」と、僕を助手席に乗せた。そんなこと聞いちゃいない。手みやげも持たず尊敬する彼の家族と会うのはなんとも恐縮であるが、仕方ない理由があった。「痛風になっちゃってさ。薬が強くてトイレから離れられないんだよ」。幸いに症状は軽く、2日前に発症したが薬で痛みはずいぶんとひいたとのこと。「医者の態度がさ、あーあ痛風ですねって感じで病気扱いじゃないんだよね」と。そういえば椎名誠さんが発症した時の話で、周囲からバカにされたが心配はされなかったみたいなことを書いていたな。

以前、あいさつ程度は交わしたことがある奥さんに照れながらあらためてあいさつを交わし、やがて3人で呑み始めた。さすが師匠の奥様はステキな方で、こちらをまったく遠慮させないリラックスタイムとなった。しばらく呑んでいると23歳になる娘さんが帰宅してきて、さらには高3の息子さんも帰ってきて、さすがに「そろそろおいとまします」とおとなしく出ようとすると、カラオケに行こうとなった。「いや、それはマズイでしょ。家族水入らずのところに僕なんかが邪魔しちゃ」と断ってみたが、さすが師匠の娘さんも出来ていて「私も久しぶりに歌いたい」と、気づかい発言が飛び出し、車の運転までかって出てくれた。高3の息子も食事を済ませて参戦が決定して、こうして61・53・45・23・17歳という実に年齢層の広いカラオケ大会が実現した。

もう曲なんかグチャグチャではあるものの、僕は真ん中世代だから上も下の世代でも知っているような曲を選択したつもりだ。『勝手にシンドバット』とか『ホテル・カリフォルニア』とか。師匠と奥様は我が道を行き、娘さんはさすがに社会人だけあってゲストの僕に寄せて選曲してくれたが、高校生の弟さんにはまったくない感性で、自分の世界を突っ走っていたが、今一番好きなバンドなんですとユニゾン・スクエア・カーデンを入れた。「おっ、たまに呑むよ」というと目をまん丸にして「えーっ、スゴいっす」と、なんだか人のふんどしで相撲をとった気分だ。すっかり尊敬されてしまった。

「この人の天城越えを聴かないとカラオケに来た気にならない」と、師匠に無理矢理のトリを命じられ、これまでいくつもの取引先をビビらせてきた熱唱を披露した。奥さん苦笑、娘さんバカさ具合に関心、息子さんいわく「カッコいいっす」と、やはり他人のふんどしである。こうして驚愕のカラオケ大会を終え、ホテルに送っていただき夜を終えようとした時はもう午前0時を過ぎていたとさ。ヤレヤレ、ホントに迷惑な男であるが、こうした付き合いができる師匠がまた好きになったよ。呑んべえ、万歳。

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