つい先日不親切なグルメガイドでご案内した昭和なイタリアンの店に、早くも2度目の訪問となった。先日は呑みがメインだったからつまみ系しか頼んでおらず、よく考えたらスパゲティーを食っていない。そんな状態で昭和ジャンキーのみなさんにオススメしていいのかとの、自分への疑念が生じた。それは次第に大きくなり行かねばならぬと、まだ初回の興奮が冷めやらないままに出かけてきた。と、言い訳がましく書き出したが、要するにミートソースが食いたかったのさ。
ランチタイムである。そんな時間にもかかわらず灰皿がドーンと置いてあるのはまるで昭和の茶店である。テキパキと元気に働くお姉さんも昭和っぽくていい。メニューも見ずに迷わずミートソース(890円)をオーダーした。ドリンクが付くのは本来あたり前田のクラッカーで、昨今のプラス100円とかさもサービスっぽく主張しているのは気分が悪くてならん。なんだかうるさいじいさんみたいになってきたが、そのじいさんの気持ちを満たしてくれる。
出てきたミートソースは先日もお伝えした通り茶店のクオリティでなく、完全にレストランである。バッチリのアルデンテにお上品なソースは、昔世話になった茶店のものやお袋の作ったのとはまるで別の食い物だ。多めに入ったマッシュルームに、パセリなんかちらしているのもおしゃれったらない。控えめな量もイタリアンレストランぽいけど、後から入ってきた常連風は「大盛り」とオーダーしていたからきっと設定はあるのだろう。旨味たっぷりで塩分を抑え込んだソースは見事だった。笑えるのは、これだけのクオリティなのにチーズとタバスコがセットされていて、フォークにスプーンも出てくることだ。スプーンの上でクルクルさせるのは、なんとなく80年代を感じさせる。
さて、ふたつ目ミートソーススパゲティーの写真は僕の作ったものだ。どちらかといえばこちらの方が昭和の茶店ぽいじゃないか。背負ってきた人生が、一皿にあふれ出ているかのようである。