「あきやん、東京ってな、天かすで金とるやん」とバカににされたのは、もう30年以上前の大阪でのことだ。「でな、つゆが醤油。あんなん食えんわ」と、さらに落とすところまで落とされた。僕は戦う。「たぬきそばは味の芸術だ。それに醤油じゃない、ちゃんと昆布と鰹出汁じゃ」と。でも確かに、関西のうどんは安くて天かすはサービスだし、つゆはすっきりと透明できれいだ。それはそれで絶品である。だか江戸がそんなにダメだとは言われたくない。そもそも、天かすって言い方からして品がない。揚げ玉と呼んでくれと無駄に訴えたりした。
「もんじゃってな、あきやん、あれ好きなんか」と、そばの話題に続くことがよくあった。大阪のお好み焼き文化は確かに素晴らしい。街のどこでもうまく安くいただける。だが、彼らは荒川区が誇る駄菓子屋もんじゃを知らないで言っているのだ。ガキがポケットにある小銭で食えるのがもんじゃで、一杯100円しないところがゴロゴロあった。そこに併設(!?)されている駄菓子コーナーでラメックを買って投入すれば、焼きそばもんじゃになる。そんなガキの遊び心満載の食い物がもんじゃであって、お好み焼きと並べて語るものではないと訴えた。不思議の国のアリスを根城にして大阪のライブハウスで歌っていた昭和60年のこと、僕はライブの途中で東京もんだと白状しながらこれらの話をしてひんしゅくを買いながらも、勇気を讃えて拍手をもらったりした。
時は流れた。今も僕はたぬきそばを好んで食う。たかが揚げ玉、されど揚げ玉である。僕がいつも行くそば屋ではたぬきはかけの100円増しだ。ほうれん草になると、そして具の主役揚げ玉で100円である。これを高い安いの尺度で言ってしまったら確かに高いかもしれんが、それは一杯のどんぶりの中で奏でられるハーモニーに100円なんだから安いもんだろうと、大阪でのあの日を思い出しながらうなづいていたりする。
天かすと揚げ玉。大阪人も東京もんも双方愛するトッピングであることは間違いなしだ。今日もこいつが堂々と乗っかったうどんとそばが大量消費されるんですなあ(笑)。
文化の違いって面白いですね。若い頃初めて大阪に行って立ち食いソバ屋に入ったときに「きつねそば」と注文したら、「はい、タヌキですね~」と返答され戸惑ったことを思い出しますw。
「大阪では揚げ玉は無料だから注文するものではなく、どちらも油揚げが入ったうどんがキツネ、そばがタヌキ」だということを友人に聞かされてビックリしました。
そうそう、ためきときつねにまるで遊ばれてますな。
文化の違いは日本全国いたるとこにあって、狭い日本なんて誰が言ったんだって思います。