今日の東京は穏やかで、そうなると冷たいそばが食いたくなる。もりそばってのなぜこうも僕を魅了するのだろう。ネギ、わさび、そして汁が織りなすシンプルなハーモニーに踊る主役そばは、何ものにも代えがたい魅力にあふれている。さらに無粋な僕はカレーをセットするのだ。シンプルをやっつけた後にはカレーに汁を加えて食らう。これがそば屋での正しいカレーの食い方である(笑)。
ここは有名店でなければ、とくに騒ぎ立てることがあるわけでもない普通の街そば屋だ。更科を名乗っているものの、会社の近くにある江戸から続くそれではなく、ご夫婦で営んでいるくどいが普通と呼ぶのがもっともしっくりとくる店である。タイトルでは今年のナンバーワンとしたが、この街に事務所が移転した2007年よりナンバーワンかもしれないい。もう10年以上になるということだ。
ランチタイムは大忙しでパートのおばちゃんが大活躍する。「いつも来てくれたありがとう」と言ってくれる。こんな会話もあった。「そばが好きなんでしょう。あっちの更科は行ったことがあるの? 高級なんでしょ」「ここよりはちょっと高めですけど、それほどでないですよ」「おいしいの」「いやいや、ここの方が美味しですよ」なんて気遣い混じりのやり取りだ。「今日は何? カレー、たぬき、鳥?」と聞かれる。そのまま、この店でオーダーする頻度の高い順である。カレーはもちろん今日もいただいたカレーセットのことで、たぬきもそのままで鳥は鳥南蛮のことである。うどんも扱っているが、僕にはその単語がないこともわかっていてくれる店だ。
今年も暮れていく。いただきながら今年あと何回だろうなんて考えながら噛み締めた。土曜日はご夫婦だけで店を回せるくらい客は少ない。暇なせいで薄いそば湯をのんびりといただきながら、今年も感謝だななんて気分を味わった。さあ、もう12月も残り半分。カレー、たぬき、鳥のパワーで乗り切るぞ。この順番で今年の残りを回していこうなんて、おバカなことを実施しようと考えている今日だ。