先日仕事であるコーラスグループに1日張り付いた。1つの感動を作り上げる現場に貼り付けたのはとてもいい経験になった。
朝会場に入ると舞台を作り込んでいて、徐々に関係者が入ってくる。控え室の並ぶ廊下ではメンバーやスタッフたちのリラックスした談笑が飛び交い、声を出し始めるシンガーもいる。なんだかいい雰囲気だ。やがて衣装に着替えていないままのリハーサルが始まった。本番さながらに歌い込むのはさすがで、立ち位置のチェックやアクションまでもきちんとやる姿におっさんは早くも涙が準備OKになる。
ピアノ1台で歌い込むグループで、リハーサルが終わった後はピアノの調律師が入念に作業を進める。狂いがまったくわからない凡人なのが情けないが、絶対に狂いを逃さないぞとの執念を感じた。1時間ほどかけて仕上げる姿にまたもおっさんの涙の準備が進んだ。
調律が終わりすべての準備が整った直後にステージから見た客席だ。スタッフも誰もいないホールってのは初めて見た。歴史のあるホールで、ここから何千もの感動を生み続けてきたのだろうとまたまたおっさんの心が動く。夢を見て努力を重ねここに立てる者は一握りだ。幕が上がればその日までの自分の全てを注ぎ込み、客を感動へと導いていく。ここより大きなところに行ける者がいれば、この広さが限界の者もいる。残酷なほどの裁きを受けるのがステージである。そんなことを考えながら、いつかこんなステージで自分を表現したいなと思ってしまうバカ者だ。
この日集った客たちは幸せな時間を過ごした。素晴らしいステージであっという間の2時間を僕もみなさんと共有した。もちろん涙である。1日一緒に過ごしたことで感動を生むための必然を知れた気がした。クオリティ、新しさの模索、真心。スタッフを含めてこれらが追い込まれて1つの夜が完成する。日々流されていると忘れかけてしまう、自分を高いところへと押し上げるのは自分しかいないのだ。