昭和のおっさんの絶対的ツール。

タイトルのアンサーはスバリ爪楊枝だ。昭和に比べるとやや嫌われ者になった感はあるが、そば屋から出てきた男がくわえているのが悪くないと思えるのはギリギリ僕ら世代までかな。同世代でも女子は嫌うだろうし、なんで昔はまかり通っていたのだろうと考える。「武士は食わねど高楊枝」なんて、粋でかっこいい言葉の影響か?　いやいや、俺たちのヒーロー『木枯し紋次郎』のくわえ楊枝姿だろなんて、いずれにせよ今のダサいイメージは全くない。変われば変わるもので話題のニホンカワウソほどじゃないにしろ、ランチタイム終了間際の爪楊枝おじさんは絶滅危惧種で、若者たちが指を差す行動なんだろう。

でもそんな風に嫌ってばかりじゃイカン、爪楊枝ってのはいろんな使い方がある偉大なツールだ。ちょっとしたオードブルやフルーツに使う分にはおっさん臭がなくなり、安くて便利このうえない。料理に使うこともしばしばで、僕が愛してやまない湯豆腐で、鍋に張った大量の昆布は丸めて爪楊枝で止めて炊く。ほんのわずかな酒と醤油を加えて柔らかくなったところに、豆腐のつけダレに使った鰹節をちょこっと乗せれば焼酎がガンガン進む一品になる。ガキの頃、スイカを上品に食うとき(あまりなかったが)は爪楊枝で種を掘り出したりもした。シーハーシーハーするだけでなく、生活に染み付いているのは安価に提供してくださる日本の技と努力による。深く感謝だ。

と、いろいろ出して持ち上げたが、歯の隙間が広がり歯茎が下がるばかりのおっさんにはやはり正規(!?)の使い方がありがたい。そば屋には今でもほぼ必ず置いてあるものの、洋食系を中心にどんどんテーブルから姿を消している気がする。茶店なんかも同様、テーブルに置いてあると昭和の落ち着きを感じてしまうのはやはりおっさんだな。

さて、そんな爪楊枝をネタにしたのはこの写真による。わかりづらいかもしれんが、左の空になった入れ物は右のものより一回り大きい。左がなくなって買ってきた右のおニュー(死語!?)は、500本入りだから空っぽのは6～700本入っていただろう。そして使い終わったこの入れ物の裏になんと暗号を見つけたのだ。“27 10月”と。一瞬考え込んだが、ほんの数秒で脳がピキピキと動いた。そうだ、これを買った時にあまりにデカイからどのくらい使うのだろうと書き込んだのだ。もしかしたら寿命が先にくるんじゃないかと軽口を叩きながら。そう、平成27年の10月より使い始めたということだ。寿命を持ち出すくらい長いこと使うだろうと思ったのだろうが、2年足らずで使い切ったことになる。平均すると1日に1本強。あまり家に帰れない暮らしぶりを考えると、随分早いペースで使っていることになる。無駄遣いをしている気もするが、それも安価に提供してくれる日本の技と努力の賜物だと思って大胆に使わせてもらっている。

今回、500本入りが3つ入りのお徳用パックを買ってきた。同じペースで行くと5年前後か。歯茎はますます下がるからペースは上がるかもしれない。「はん、んな先のこたあわからねえな」と、粋を気取ってみたりするのは爪楊枝と武士の関係からだな。たかが爪楊枝、されど爪楊枝。男の生き様にまでコミットしている愛すべきツールである。