妄想が呼んだ味噌ラーメン。

『昭和40年男』をきっかけに知り合った同世代の男女で、メンクラ(麺’S・倶楽部)なるラインのグループを作って楽しんでいる。いや、僕は苦しんでいる。10人以上の部員が日夜部活に励んでいて、倶楽部の名称のまま麺を食らい写真をコメント付きで投稿する。みんな真剣に部活に汗を流しているのだ。

僕は唯一の不良部員だ。いつも代わり映えのしないそばばかりで、他の部員のようなナウでヤングなラーメンやパスタにほとんど手を出さないから投稿できないのである。

このコミュニティである日、一杯の醤油ラーメンが投稿されていた。シンプルなおっさん好みのルックスだが、ひとつ肝心なことを見逃さなかった僕だ。その店は昭和のおっさんたちが愛する『赤坂 一点張』だ。赤坂で呑んでいて終電を逃すと必ずと言っていいほど吸い込まれてしまう。体にいいわけないよと植木さんの名曲を口ずさみながら餃子&ビールを頼み、やがて味噌ラーメンで締める。周囲にも僕のような一点張ジャンキーなおっさんが多くいて、罪悪感を軽減してくれるのだ。昔懐かしの味噌ラーメンを笑顔ですすり、翌日は強く後悔するなんてのを繰り返している。

醤油が投稿されたせいで、あの味噌の名店でなぜだと考えているうちにここの昭和なテイストを強烈に思い出してしまった。「うまいんだよなあ」と脳が繰り返すうちにどうしても味噌が食いたくなった。ダイエット中の僕に酷い仕打ちと言ってよい。昼を抜こうと思っていた僕は立ち上がった。赤坂まで行ける時間などないが、世界貿易センターなら行ける。一点張以上に昭和な味噌を食わせる『札幌本舗』に飛び込んだ僕だ。

すすりながら詫びるような気持ちで「悪いのは僕じゃない。麺’S・倶楽部だ」とつぶやきながら、スープ一滴残さず完食の上、ここでは外すことはできない昭和なしょっぱいチャーハンをハーフサイズでセットするバカ者だ。はーっ、退部届けを出そうかと悩んでいる今日だ。