東海道 徒歩の旅を終えて。

東海道徒歩の旅の取材を一昨日終えた。今回も様々な経験をしてひと回りもふた回りも大きくなった僕だ。暑い中を歩き続けるのだからと、炭水化物を中心に食いまくったせいで、体の方もひと回り大きくなってしまったのは残念である(泣)。旅を終えての雑感をお届けしよう。

旅の2日目早朝のことだ。庭掃除をしていた爺さんから「あんた、東海道かい?」と声をかけられ、「はいそうです」と答えた。このやり取りは日本語として完全に崩壊しているが、東海道では成り立ってしまう。爺さんは「気をつけて行きなよ」と見送ってくれた。東海道はそんな風に旅人をやさしく迎え入れてくれる方が多く、大きな懐みたいなものを感じる。長きに渡って旅人を見守ってきた文化であり、また、近年、徒歩旅人が増えているのも大きいのだろう。チョット立ち寄った飯屋や施設なんかでも、旅人に少しでもいい想いをしてもらおうという気持ちがビシビシと伝わってくる。

今回は大井川からスタートして浜名湖をゴールにした。国越えのたびに街の表情の変化を感じるのは、徒歩の醍醐味である。単純な話で、味もドンドン変化していく。料理の甘みが強くなっていくのだ。浜松で入った居酒屋ではテーブルにある醤油がたまりだった。「大井川でハッキリと別れる」とは、立ち寄ったスズキ歴史館で聞いた話で、日本は決して狭くないのである。

静岡県を歩いていると、スター企業たちに多く出くわす。前回は俺たちのルーツのひとつであるプラモでお世話になったタミヤを通りかかった。今回はなんといってもバイクメーカーだ。ホンダ、ヤマハ、スズキという世界トップ3メーカーの創業の地であり、ヤマハとスズキは今も本社がある。加えて楽器は、ヤマハ、ローランド、河合楽器などが本社を構える。静岡県は、プラモ、バイク、楽器という昭和40年男にとってルーツといえるジャンルのトップブランドが固まっている県で、いわば俺たちを育ててくれた地なのである、パチパチ。残念なことに今回の生産が止まるなど、震災による影響が小さくない企業があり、観光客が激減していることと合わせて、やはり被災地のひとつであることを感じさせられた。がんばれ、静岡県と心のなかでエールを送るのであった。

旅のロケとしては、笑えるページを目指して意見を出し合い、いろんなカットをカメラマンの武田に撮ってもらった。仕事とはいえ、恥ずかしいこともある。今回特にひどかったのは松並木の中での松ダンス(!?)である。東海道には所々に松並木が点在し、雰囲気バッチリの象徴的な写真が撮れるが、どうしても似てしまう。そこで武田から「望遠で狙ってますから踊ってください」とのわけのわからないリクエストだ。
 「へっ?」
 「信号が青になったら横断歩道の真ん中でコッチに向かって松ダンスを踊ってください」
 「へっ?」
武田との押し問答の末、僕と金子はクネクネと踊った。車の窓から見た僕たちおっさん2人はどう映ったのだろうか? 観光客が減っているとはいえ、このロケが行なわれたのは土曜日で、横断歩道の信号待ちの車は列をなす。クネクネ…。カメラマンが近くにいれば何かの取材だと理解していただけるだろうが、望遠なので近くにその姿はなく、ドライバーたちや家族連れの観光客にはさぞ気味が悪かったことだろう。この写真が果たして次号に掲載されるかどうかは、仕上がりを見ていない僕にはまだわからないが、使ったとしたら母親には見せられない本になりそうだ。(以前、電車の旅で切符をなくしたシーンを見て本気で怒っていた)

次号が発売となる7月11日はまだ先だけど、ドタバタ3日間のページに乞うご期待だ。

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