こんな風景に出くわすことって、よくよく考えると意外に少ない。仕事をしているうちに、短いマジックアワーは過ぎていってしまう。不意に出会えた先日、ガキの頃のチャレンジングな日々を想い出した。
ガキの頃のままに、おっさんは挑戦(もがくとも言う)を続けている。だが、いつかやろうと誓っても、そのいつかは流れ流されなかなかやってこないことが増えた。おっさんになると逃げ口上や言い訳も上手になって、いつかは永遠にこないままなんてことになりかねない。時間がたっぷりあったガキの頃よりそれなりに忙しいのは仕方なく、ましてや仕事では今が正念場という同世代が多いだろう。山と積まれているからこなせばついついやった気になるが、そればかりじゃ枯れちまうからそんな中からでも挑戦を探したいものだ。
常々言い聞かせる言葉がある。マラソンの金メダリスト高橋尚子さんが東京国際で復活優勝した時に、24時間は平等だと言った。午前中の打ち合わせで新たな挑戦となる仕事を持ち込まれて、なかば引き受けちまった。高橋さんは罪な人だなあ(笑)。
プライべートの方の挑戦もゼイゼイ言いながら進めている。3月に初ライブを行ったバンドは現在曲をためていて、直近では夕暮れ時をテーマにした『夕焼けだんだん』という曲を書き上げた。おっさんの悲哀がたっぷり詰まった歌詞は、この歳にならなければ書けない内容だ。ひとりぼっちでさまよい続けたおっさんが、子供の声があふれる街に辿りついて何を想うのかという曲で、ガキの頃の原風景と現在を組み合わせたのだ。手前味噌ながらたいそう気に入っている。来週月曜日の『浅草秘密基地』で披露するからぜひ足を運んでくれって、自己PRかよ(笑)。
曲を1曲仕上げるのも小さな挑戦で、昔に比べたらたいそう苦しいけれどたどり着けばうれしさは大きい。苦しさの向こうにはガキの頃とまったく変わらず、いい気持ちが待ち構えている。野球の練習や剣道の稽古を終えての帰り道だって、その日の挑戦への小さな達成感を得ながら夕焼けを見上げていた。逃げようとする自分に、あの日のまま頑張れと夏の夕焼けは語りかけてくれる。