先日大阪ミナミで呑み屋を物色していると、昭和な写真館を見つけて思わずシャッターを切った。営業しているかは定かでないが、いい味の放出具合は半端でない。きっとミナミに住む家族の幸せを見届けてきたことだろう。
ガキの頃は節目節目に写真館に連れて行かれた。ポーズをとることや、立派な台紙に大きな紙焼きが貼られているのがこっぱずかしくて好きでなかった。きっとお袋が大事に保管していることだろう。今だったら当時の自分をかわいく思えるはずだから、今度実家に行った時にでも引っ張り出してみようか。
僕が住んでいた家は4世帯分が繋がっている長屋だった。正面左から電気屋、酒屋の倉庫兼社宅、大工さん、そして写真館とすべてが商いにまつわる世帯だった。写真館の息子とは仲がよく、2つ年下だから弟と友達の中間みたいな存在だった。4軒のうちこの家だけ勝手口がなくて、店の玄関から「な~お~くん、あ~そ~ぼ」と誘う。写真館特有のツーンと酸っぱい匂いがして床はピカピカだ。この床を滑って遊ぶのが大好きでよく叱られた。そりゃそうだ、高価な機材を倒されたらたまったもんじゃない。が、目を盗んではツルツル滑った。
当時の街はご近所で生活が完結するようにいろんな商店が軒を並べていて、大きなスーパーやコンビニはなくとも近所でまかなえていた。自然なコミュニケーションをしながら互いが支え合っていた昭和の日々へと、渋い写真館を眺めながらおっさん得意のタイムスリップを楽しんだのだった。