本日発売じゃー。と、ここで一部地域をのぞいてと言わなければならない今日でもあるのだ。発売が遅れる地域の方から早く読みたいとの声が寄せられる。雑誌流通上の問題ではあるが、欲しいモノがすぐに届く現代においてなんとも歯がゆく、申し訳ない気持ちでいっぱいである。
さて、発売直前の『浅草秘密基地』は昨日もガハハであふれた。参加いただいたみなさんは、まだ表紙しか見ていないのにゲーム話で盛り上がっているのを横目に、僕は貝になって内容に触れないようにする。ネタバレは厳禁だ。ただし、すでにバレている魚雷戦ゲームはよしで、こいつにまつわる昭和な物語が参加者の1人より聞けた。哀しくもあたたかなショートストーリーを聞きながら、僕の頭に巡った絵を加えながらご紹介しよう。
彼はその事件が起こる以前に、サンタクロースから魚雷戦ゲームを贈られた。当然ながら大喜びだ。ドキドキしながら箱を開け、数々のパーツに心躍らせ、なによりそのボディの美しさと大きさに心奪われた。余談ながら、この表紙に使った写真の撮影時に僕は横から「小ちゃ、これミニ版か?」と作業の邪魔をしたりした。
話を戻す。少年の父ちゃんは職人だ。僕の実家も電気屋だったからいつも親父がいる家で、くだらないことで叱られるのは共通していてよくわかる。ある日、魚雷戦ゲームで遊んでいる最中に外で遊ぶことになった。片付けは後でいいやと出かけようとする少年を、ちゃんと片付けろと父ちゃんが叫ぶ。細々したパーツが多い魚雷戦ゲームで、片付けが面倒くさいことこの上ない。しかもガキの頃の習性として、思いついたらすぐに動きたい。その目的しか見えなくなる。「大丈夫だよ。どうせ貰い物だから無くなったって構わないよ」と、少年はその後に続く人生にあるいくつかの失言の中でも最大級のセリフを吐いてしまった。
怖い父ちゃん。寡黙ながら職人気質の父ちゃん。そしてなんと言っても優しい父ちゃんだ。少年の不用意な言葉は、サンタになって息子の寝顔を笑顔で眺めた心を踏みにじり、最大級の雷を落とすのに十分なものだった。サンタクロースだったはずの父ちゃんは、その立場を忘れて怒鳴った。そして少年にとっては信じていたサンタクロースがこの世からいなくなってしまった。
サンタは失ったものの、少年から父ちゃんへの愛は深まった。昭和のあたたかな家族の風景が浮かんでくるのをかみしめながら、僕の中では♪父ちゃんがサンタクロース♪と響いていた(笑)。