ある日のこと、老舗の飲み屋でテレビの撮影が行われていた。芸能人たちがリアルに飲み食いしながら、そこで繰り広げられる会話と表情を回しっぱなしのカメラがとらえていた。
芸能界にまったく疎い僕でも知っている大物男性アイドルがその中にいて、強いオーラを放っているのはさすがだった。放ちつつ楽しそうに話している姿を見ていると、思わず友達になりたくなったが声をかけるような無粋なことはもちろんできない。他の客もなにもないかのように飲み食いしているのは老舗の客筋ゆえだ。携帯で撮影している奴も皆無である。
撮影後にもしばし会話を楽しんでいた面々だったがそれも終了したようで、スタッフとタレントたちは店を出て行く。この時の大物がかっこよかった。テレビで見る笑顔のままで「お騒がせしました〜」と、客の多くに丁寧に声をかけながら出て行った。くどいが、僕でさえ知っているレベルの人気芸能人である。テレビ番組でみかけるままの自然な振る舞いに強い好感を持った。
芸能人に限ったことなく、それなりの地位や経験、年齢などなどによって人は勘違いしてしまう。他人のそれに触れた時にはうんざりするくせに、自分もついついそんな行動があったりする。自分ばかりを押し通そうとしたり謙虚な態度を忘れたり、あとでヘドが出るくらい自分への嫌悪感に浸るくせに、ついつい忘れてしまう。逆に、ただひたすらに謙虚でいられた時は気持ちがいい…と、そんなところで気持ちよく感じること自体が人間練れていないぜ、まったく。大物にはそれだけの訳があるんだななんて思えば思うほど、自分をもっと練らねばいかんと反省しきりの夜だった。
あれ?そこに大物が来てたのですか?^ ^
そうです。昭和の名店です。