出社時に通りかかるこの大イチョウが、緑の見頃となっている。深くて元気な緑色は、仕事へ向かう元気とやる気をくれる。林野庁が定める都道府県の木を見ると東京、神奈川、大阪がイチョウを選定していて、なるほど、生まれも育ちも東京の僕に縁深いはずだ。
ガキの頃は実家からほど近い荒川区役所で、今時期の緑と秋の金色に光るような並木を楽しんだ。お袋に銀杏拾いを強要された時はまいったが、金色の並木の後に黄色い絨毯を楽しむと手がかじかむ季節になる。環境汚染がひどかった当時の東京でも季節の移ろいをしっかりと味わわせてくれたのは、イチョウの強さによるところだろう。銀杏を食うとその強さをしっかりと感じる。前述した、東京、神奈川、大阪が指定しているのもその辺が若干なりとも起因しているのではなかろうか。高度成長による大気汚染が問題になっていた昭和40年に選定したそうだ。
区役所もさることながら、僕のご先祖様がいる墓地には逆さイチョウと呼ばれるダラーっとつららのように垂れ下がった突起物が見事なイチョウがある。親鸞さんが旅の途中に刺した杖がこれに育ったとの伝説があり、本堂が火を出した時には水を放出したなんて話を親父から何度も聞いた。まっ、真偽はほどほどにするとして、樹齢の長い逆さイチョウはご先祖様に会いに行くたびに見上げている親しみ深いものだ。
今は夏に向かって緑真っ盛りだが、あと半年もすれば写真のように見事な変化を見せてくれるのだからありがたい。と、今も昔も東京の木に世話になり続けている。四季とはありがたいもので、心に豊かさを運んでくれる。今時期は夏への元気をいただきましょう。