なんとも昭和テイストなここは、浜松にあるスズキの歴史館のひとコマだ。展示されている車両が昭和42年発売だから、下の写真の女の子は僕らの5つ上くらいだろうか。なぜか表札が鈴木でなく田中なのは奥ゆかしさと言えばよろしいだろうか。
この時代にマイカーを買えた家だから上流階級だろう。マイカーを購入したからのぞけとの、こんな張り紙はまさか出した家はなかろうが、さぞ誇らしかっただろう。テレビもカラーテレビが本格的な普及を始めた頃で、ご存知3C(カラーテレビ・クーラー・自動車)が、新・三種の神器と呼ばれた。まだまだ日本は貧しかったが、上だけを見る元気があった。そんな頃のこの田中さん宅は、きっとご近所の奥様方の羨望を集めた家だっただろうな。
これ以前も、白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機が三種の神器と呼ばれたが、モノがあふれる現在ではこの例えの対象がない。つくづく豊かである。なのに殺伐とした感じはなんだろう。以前、戦中生まれの方にこの言葉を使った時に厳しく怒られたことがある。「こんなに豊かなのにどこが殺伐ですか」と。頭をぽっかーんと叩かれた瞬間だった。そう、彼らから見たらそういうことだが、僕らが共通して感じている将来への不安だったり人と人のつながりに、ついつい殺伐という言葉を使ってしまう。いかんいかん。そもそも明日への元気と夢なんて言葉を使った雑誌を発行しているってのに、なんとも抜けた話だ。が、不安がないと言ったら嘘になるし、人の心に寂しさを感じることがあるのも事実だ。いかんいかん。
田中さん宅のセットを見ながら、現在何が必要なのかと自問自答した。この家の居間では家族の笑顔があふれている。そう、いつの時代だってかわらない。心の豊かさに勝るものなしだ。突き詰めるところやはり、元気と夢ですな。