すすめ!! パイレーツ

今まさに一緒に旅している金子とのマンガ道の差異については、ここで一昨日書いたとおり。〆切間際にあがってきたそんな金子の原稿を見ながら、上の兄弟を持たない昭和40年男である僕のマンガ道を発表したいなとぼんやり考えていたときのことだった。“そんなヒロシに騙されて事件”が起き、こうしたトラブルをチャンスに変えてしまうのが男じゃーとばかりに、僕のマンガ道を表現できる3番勝負にしようと思いついた…これが今回の3番勝負の内容を決めた理由なのさ。

『硬派銀次郎』 vs 『あしたのジョー』からの出題は、前号で“力石徹”というカードを切ってしまったので残念ながら断念することにした。そこで、この2大作に続き、これまたとてつもなく大きな存在として僕の胸に君臨する『すすめ!! パイレーツ』を選んだのである。

当時はマンガをストーリーものとギャグにカテゴライズしていた。そのまんま手塚先生と赤塚先生というわけだ。どちらかといえば夢中になるのはストーリーものというかシリアスものが多かった僕に、突如こじ開けて入ってきたのが『すすめ!パイレーツ』であった。たまらなくおもしろかった。走る婆さんは今思い出しても爆笑もので、あのころ短編で書いた『ゴーアヘッド』(知ってる?)の“さもないとアンモナイト”も鮮烈だった。江口さんによって、笑いのトップレンジはテレビが作るものとの認識を、大きく改革させれたのである。それまでは、ドリフや電線音頭といったテレビが供するものが、いつでも笑いのトップだったのに、その座を奪ったのが江口先生ということになる。だから僕は、ひょうきん族に行かなかったのかもしれない。

センスというものを初めて教えてもらった気がしたのも大きい。作者の趣味が垣間見えてきて、そのどれもにセンスを感じさせられた。とくにテクノの流入のさせ方は子供心に感心したものだ。それと圧倒的にカワイイ女の子たちもまた、大きな魅力である。独特の雰囲気をもった女子キャラが、彼の手によって次々と登場した。絵の女の子のファンになるという気持ちを持ったのも、テレビからアイドルを仕入れることからの変革であった。後にイラストという世界を知ったときにすんなりと入れたのは、江口先生のおかげである。

やがて白いワニに度々襲われるようになったことは周知の通りで、もっともっと読みたかった漫画家であるのは昭和40年男の共通認識ではないだろうか。どうですかねえ、みなさん?

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