今週の東京は春の訪れを疑うほど寒い。暑さ寒さも彼岸までと言われるそのお彼岸が目の前だってのに、極寒の3日間である。そんな日はこの一杯が体を温めてくれる。会社にほど近い老舗そば屋『布屋更科』の親子かき玉である。おーっ、今日は親切ガイドですな。
とろみのついた出汁にふんわりと卵が浮かんでいるこの美しさったら。あまりにも美しくて写真はちょっと寄り過ぎたな。同店のホームページによると創業は寛永3年(1791年)だ。たいしたものである。でも老舗の気取った高級店かといえばそんなことはまったくなく、価格も街の普通のそば屋とほぼ同等、若干高めかなという程度で江戸から続く絶品そばを楽しめるのだ。そして老舗らしからぬ(!?)挑戦がいい。
冬のごちそうである親子かき玉そばは、その名の通り卵と鶏肉が浮かぶ一杯だ。その鳥なのだが、なぜか唐揚げで熱々なのだ。ふんわり卵とカリッとした鶏肉のバランスは意外でよい。熱々の唐揚げを出汁と卵が包み込みついビールが呑みたくなってしまうのをグッとこらえるのが大変だ。一昨日の寒さに負けて駆け込んでオーダーした僕である。この冬最後かもしれないなあなんて思いながらすすった。
挑戦は5月より始まる冷やしものになるとまたまた冴える。定番の冷やしたぬきもいいが、店の名を冠した冷やし布屋は鳥そぼろと錦糸卵の黄金コンビがメインになり、豚の角煮を乗せた冷やし角煮なんてメニューもある。夏バテに勝てとのメッセージか。江戸時代には考えられないメニューを堂々と出す姿勢が好きだ。
そしてもう1つ、今月は僕にとってうれしい挑戦がある。ランチタイムは大盛り150円がサービスなのだ。普段は月曜日と雨の日に同サービスを展開していて、今月は土日以外毎日である。このサービスを知ったのが寒さに震えた月曜日だったから、今月は通うぞと燃えている。そう考えれば寒さも悪くない。たかが150円、されど150円である。