昨日はヤマハのレース体制発表会に出かけてきた。今年の契約を勝ち取ったライダーたちの晴れ舞台である。結果だけがすべての世界にいる男たちの表情は、シーズンへの緊張とモチベーションにあふれていて気持ちいい。会見終了後のフリータイムに、仲のよいヤマハマンに「拓也の具合はどうですか?」と聞くと「今日来てますよ」と意外な回答だった。というのも。
拓也とは、去年ヤマハファクトリーでモトクロス全日本選手権を戦った三原拓也選手だ。その前年まではカワサキに在籍して、何度か仕事をご一緒させていただいた。一昨年の鈴鹿8耐ではステージイベントを全面的に手伝ってくれ、終了後に焼き肉で打ち上げた。その彼がもっと高い所を目指して移籍を決意したのが一昨年で、その暮れには送別会で見送り、去年のレース発表会では緑から青に変わったマシンでやる気に満ちていた。あれからたった1年なのに、彼の状況は凄まじく変化した。
練習走行中の事故だった。本人には聞けずに人から聞いた話でしかないが、ジャンプから大転倒してしまった。背骨の損傷により下半身が麻痺状態となってしまった。カワイイ奥さんとの間に子供を授かり、幸せとやる気の絶頂にいた若者に試練というにはあまりにもひどい。
だが、ヤマハは彼と契約した。結果だけがすべてと前述したが、チームは三原選手に若手の指導をミッションとして与えたのである。壇上にはいないが、会場にいた彼を見つけて固く握手した。さぞつらいだろうがそんな表情はまったく見せない強い男だ。きっと何度も枕を濡らしただろうにと思うとヤバいヤバい、せっかく気丈でいる男の前で涙を見せるわけにはいかん。わずかな時間ながら、前だけを見ている言葉を繰り返す若者に男の姿勢と強さを学んだ僕だった。
山中教授、iPS細胞の応用を急いでください。拓也がもう一度宙に舞う姿が見たい。お願いします。
調子も良かったのに本当に残念でした。