タメ年男とランチ打ち合わせでのこと。全メニュー均一価格で僕は鳥の立田揚げ定食で、相方はホッケ定食だった。全席タバコが吸える店で、みなさんプカーッとやっている。我々も元スモーカーだからあまり気にせず、打ち合わせを続けていると、注文の品がテーブルにドンと置かれた。「ちっちゃ」と思わず声を出す相方に大笑いする僕だった。
ホッケを初めて食べたのはバイト先でのことだった。じつは食べたどころかその存在さえ知らなかった僕で、居酒屋のバイトによって出会った。ホッケ以外にもそれまでまったく知らなかった食い物と出会い、なかでも揚げ出し豆腐やアンキモ、クジラベーコンやホッケは僕の人生を変えてしまった(!?)。居酒屋で彼女と2人でつつくホッケのうまさったらない。うまい部位とそうでないところの極端な魚だから譲り合ったりして、仲睦まじい恋人たちのつまみである。
相棒は何度も「ちっちゃ」と不満を述べていたので、僕の立田揚げをひとつ分けたがこれがちっともうまくない。オススメだと書いてあるから頼んだのだがまったくうまくない。みそ汁もひどく、2人とも文句たらたらで店を出た。あまり時間が無くここでいいやと入ったチェーン店だから仕方ないが、食べ物の恨みは海よりも深く山よりも高い。800円でおつりが来たが、ものすご〜く高く感じたランチだった。
食の価格と満足度は密接で、このランチがワンコインだったら良しとするかもしれない。いや、おっさんとなった今では無理かな。ご飯をおかわりできるから10代の僕なら大満足だったろう。おっさんは量より質、油よりうま味、そしてわずかでも健康志向であってほしい。高望みするのに応えなければならない飲食業界も大変である。あっ、我々もまったく同じだなと落ちをつけたのだった。