若きサムライよ、羽ばたけ。

image2昨日は極寒の山梨県甲府に出かけてきた。開幕直前に迫ったバイクレース『スーパースポーツ世界選手権』に、今年よりフル参戦予定の渡辺一樹選手の壮行会があったのだ。地元の方々や関係者を多数集めて華やかな宴だった。彼とはカワサキのイベントを通じて濃密な仕事をさせていただき、今ではよき友である。

さて、この壮行会で汗が吹き出るシーンがあった。それは、受付で番号を記された抽選券を渡されたときの嫌な予感から始まる。「もし当たっちまったら、僕の立場でどう振る舞えばいいのだろう」と。僕には『カワサキバイクマガジン』なる奇妙な雑誌の編集長という肩書きもあり、渡辺選手との接点の根幹はこの雑誌だからだ。ヒヤヒヤしながら抽選会を見守っていたが、僕がもらった21番は呼び出されることはなかった。「なんとバカバカしいことを考えていたんだ」とチョッピリ自分が恥ずかしくなるような不思議な気分を味わった。が、場面はとんでもない方向へと動く。

ステージに飾ってある“レースマシンに跨がって渡辺選手と一緒に写真を撮る権”なんて余計な追加抽選をするという。MCの方と彼のステージ上での悪ノリに「おいおい終っただろう」と突っ込みたい気分でハラハラしていると、まさかの「21」とコールする渡辺選手がそこにいた。「おー、まい、がっ」と一瞬逃げちまおうかと思ったがこう見えても僕は江戸っ子だ。一瞬にして「おー、まい、がっ」から立ち直り、両腕をあげながら21番というヤマハナンバーへの憎しみを述べるステージ上の彼に近づいていった。そして彼は僕を『カワサキバイクマガジン』の編集長だと、集まった彼のファンの方々にばらしやがった。いつもは僕が「チームグリーン、渡辺一樹」とステージに呼び出す役だ。その真逆。しかもおもしろがって写真を撮る方がたくさんいる。これで照れない江戸っ子はいない。しかも小さくなった僕を励ますかのように、僕の肩に手をかけるじゃないか。ステージを降りてもしばらく汗がひかなかった。

と、そんな恥ずかしい体験をさせていただき、宴はフィナーレを迎えた。彼のこれまでのレース人生を綴った映像が流れ、ここですでにおっさんの涙腺は緩む。そして壇上より、いつも僕の横でイベントを盛り上げてくれていた渡辺一樹が言葉を発した。諦めようと何度も思ったが今日があるとの言葉に、言うまでもなく僕の涙腺はぶっ壊れた。

「険しい道だが真っすぐに進め!!」

鳴り止まない拍手のなかで、若きサムライに心からエールを贈った。

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