渡辺一樹選手が世界選手権に参戦することになった。おっと、『昭和40年男』読者には彼の説明が必要だな。カワサキの看板を背負って去年まで4年間に渡り日本最高峰クラスのバイクレース『JSB1000』に参戦してきた若者だ。僕はカワサキとの共催イベントのMCをかれこれ20年近く仰せつかっていて、彼と仕事をご一緒させていただいた。2013年が初めてのトークショーで、当時22歳の若者は初々しく一緒に登壇した先輩ライダーのトークにおぶさったようなトークだった。その翌年より、ウチとカワサキが共催で仕掛けるイベントのひとつにレギュラーゲストとして迎えることになり、以来、去年の11月まで実に多くのステージを展開してきた。トークの内容は彼のライダーとしての成長のままに深くなっていく。そんな姿を間近で感じながら、レース現場に出かけては応援を続けた年月だった。
その彼が、今年より念願だった世界選手権へと向かって旅立つ。昨日はその壮行会だった。戦う舞台はワールド・スーパー・スポーツというカテゴリーで、600ccクラスのスポーツバイクをメインにして戦う。1000ccクラスで競うワールド・スーパー・バイクのひとつ下のクラスと言っていいだろう。渡辺選手にとっては4年間走らせてきたバイクより小さな排気量となるのだ。日本の最高峰クラスより、排気量を落としてでも世界戦の方が彼にとって魅力的だということだ。
昨今、日本の最高峰クラスから世界へと羽ばたくライダーが少ない。圧倒的な強さを誇る選手でさえ、スポット参戦がやっとである。そこも渡辺選手の判断では大きな要素だろう。かつて全日本の600ccクラスでの優勝をキッカケに、カワサキの看板と最高峰クラス参戦を勝ち取ったように、今回も今年、遅くとも来年には結果を出して3年目には上で走るというロードマップで、今年27歳を迎える彼にとって20代を締めくくる3年計画だ。が、これまでの4年間とチーム体制は大きく異なる。正直に言えばマシンを速く走らせることに関しては、レベルが下がった環境での戦いを強いられる。が、これも自ら選んだ道。自分を厳しいところに追い込んで、真に強いレーサーを目指す。3年を経た後、30歳を迎えたときに世界のトップを狙うライダーへと自分を持っていくという今回のチャレンジだろう。と、ここまですべて、彼とのコミュニケーションを通じて感じている僕の想像でしかない。
彼のレース人生のなかで、もっとも大きな意味を持つ年が始まる。その決意を壇上で語る彼と、初めてのトークショーとを重ねながらその成長が心からうれしかった。もっともっと大きくなれと祈りながら涙腺が壊れている俺っていったいなんだ? 晴れの舞台だってのに、やれやれ困ったおっさんである。
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