つい先日のこと。生まれ育った荒川区の実家の近く、町屋での用事を済ませたのは昼時だった。昭和のラーメンでも食おうかと、かつてお袋に連れられて入った中華料理店を訪ねるも、ことごとく違う商売になっていた。なかにはチェーンのラーメン店になっているところもあり、がっかりしながらも探索を続けると喫茶と中華が併記されている看板を見つけた。昭和の香りはするものの、喫茶店をやりながらの中華じゃダメだなと1度は通り過ぎた。「でも待てよ、昭和の店ってのはなんでもやるんもんだ」と戻ってショーケースを眺めると、実にさまざまなメニューがあり、その中でラーメン500円が燦然と輝いている。「ふっ、コイツはインだな」と入店すると正午からは少し外れているってのに客が多い。名店かもしれない。年季の入った店ながら、なぜこの日まで知らなかったのだろうと首をひねりながら席に着いた。
数々の魅力的なメニューの誘惑に負けず初志貫徹でラーメンを注文した。待つことしばし、出てきた丼はまさしく昭和だ。スープを1口運べば思わず「塩っぱ」と声に出るほどだが、それも含めて昭和のうまさが詰まっている。チャーシューが柔らかくて味もしっかりとしていて、ナルトが2枚乗っているのも500円を惨めにさせなくてよい。「うまいなあ、さすが俺の街だぜ」と訳のわからん感想で席を立った。
麺だけじゃない。チャーハンやカレーライスを無心で食べる方、そしてグルメレポーターのような方がオムライスを一眼レフカメラで狙っていた。その日の気分をいつでも満たしてくれるようなメニュー構成で、あんみつを食べている女性も笑顔だった。なんだかここのところ昭和グルメブログのようになっている気がしなくもないが…、さてさて、今日も元気に不親切なご案内といこう。尾竹橋通りを町屋から尾竹橋方向へ行くべし。右側を見ながら進むと喫茶と中華が併記されたレトロな看板に出会うはずだ。ネットで検索なんてしないで、のんびりと散策しながら探して頂戴(笑)。