少し前になる佐賀出張でのこと。スタッフたちと夕飯という名の呑み会に出かけた。宿を取ったのは小城(おぎ)という街の小さな温泉宿だ。僕らはイベント出張の際はいつも素泊まりにして繰り出すことにしている。ステキな出会いが必ずあるからだ。が、小城は静かな街で近所に呑み屋が見あたらずずいぶんと難儀した末、なんとも昭和な店を見つけた。店名といい看板といい、古きよき時代の香りがプンプンする。入ると店内はまるで場末のスナックだ。カウンターを常連たちが陣取っていて、我々はあまり使ってなさそうな座敷のテーブルを囲んだ。
メニューはホワイトボードに約20品ほどで、スナックに毛が生えた程度である。カウンターの客たちもつまみは取っておらず、楽しそうに酒を酌み交わしていた。想像するに食事は済ませていて、憩いの場としてここに集っているのだろう。だが僕らは腹ぺこだ。いくつかのメニューをオーダーするとママさんは厨房に引っ込んでしまった。客たちは飲み物がなくなるとカウンターに勝手に入り込み、飲み物を調達するのだ。うーむ、完全に世界が出来上がっている。こんな店を昭和40年男は深く愛してしまう。若いヤツらにはわかんねえだろうなあ。
少しずつ常連たちとの距離が縮まった夜7時に突如酒を振る舞うという。なんでも10月1日は7時になると佐賀県中の呑み屋で日本酒の乾杯するそうだ。なんだかよくわからんがいただけるなら遠慮はしない。「乾杯」と杯を重ねる。僕らもみなさんと乾杯して、この世紀のイベントに参加したのだった。翌日、県内の別の街にいたスタッフたちに聞くと同じことが行なわれていて、さんざん振る舞ってもらい二日酔いだとのことだった。
旅ってのはいいものだ。こうして地元の方々とのふれあいを楽しみ暮らしや習慣、文化を知ることができ、そこからたくさんのことを学べる。旅心を待つことで、ほんの僅かな時間でも心の宝が得られるのだと、全国を巡りながら習得できた。そして一期一会の気持ちを持ちつつ、またこの店に来る日を夢見てボトルをキー プしてもらった。どのくらいの期間かはわからんが僕らの足跡を店に残したのだ。
小さくともいい旅に出ようぜ、中年男たちよ。
謎の風習で酒を振る舞う佐賀県の呑み屋さん。
そして、次に来店するのはいつになるのか分からないのにボトルキープをする 粋な昭和40年男!
まさに『一期一会』
素敵な旅ですね♪♪
それにしても「えくぼ」って…
久々に聞く単語ですねぇ。
ありがとうございます。
えくぼの〜って歌がありましたね。なんで最近使わなくなったのでしょうね?