つい先日、息子が大阪出張だとのこと。さすが僕の息子だけあって、仕事が終わったら1人呑みするからいい店を教えろという。たたんでいなかったら間違いなくここを押したが、仕方なしだ。逆にそのおかげで開拓したのが、ミナミの小さなおでん屋だ。女将さんを娘さんが手伝っている10席足らずのカウンターだけの店で、息子には「難しい土地で25年も続けてきた優しい味を確かめてこい」と伝えた。ここ近年、僕にとって大阪ベストワンである。ここは情報解禁していいかわからないから不親切ガイドだ。東心斎橋一丁目にひっそりとある。丸いおでんの提灯を探せ。
もう一軒は情報解禁バリバリOKの店。だいぶ前にこのブログに書いたことがある、うどんの大阪なのにそば居酒屋で勝負している。なんとも大胆な話じゃないか。しかもここの経営者は、大胆なことやっているわりには見た目には優男である。さて、僕はなぜこの店に世話になっているのか。
ある日、大阪での宴を終えて1人でフラリと入った。カウンターに陣取って焼酎を呑んでいると「北村さんですよね」と優男から声をかけられた。まさかの場所で再会した瞬間の驚きったらない。彼は赤坂で世話になっていた店で、どちらかといえば目立たない存在の若者だった。それが心斎橋の一等地で商売を始めて、見れば繁盛しているじゃないか。そんな才能があったとはビックリ仰天で、以来ミナミで呑んだときは顔を出すようにしている。息子には「若者が無謀な勝負を成功させた姿を見てこい」と紹介した。どうやら勉強になったようである。
両店とも行ってきたようで、さすが我が息子は1人で26時過ぎまでふらついていたようだ。なんとなくうれしく思えた。そして、遠くはなれた土地に親子で世話になれる縁が持てていることをチョッピリ誇らしく思う。