何年か前に講談社が発売した『寅さんDVDマガジン』すべて買いそろえた。48作品に加えテレビシリーズの第一話と最終話が収められた1枚と、寅さんに逢いたいと再編集された『寅次郎ハイビスカスの花』の特別編が加わった全50巻は僕の宝物だ。
昭和40年男にとって寅さんはどんな存在だろう。僕にとってはそもそも親父のヒーローであり、幼少の頃テレビ放映に付き合ったチョッピリ古くさい存在だった。とくに洋モノに夢中になった中高生の頃は意識から完全に外れていた。ところが20歳を過ぎた頃から幼少の想い出と相まって好きになっていった。テレビで放映があるとビデオに撮って何度も見るようになり、40歳を過ぎた頃よりは涙を流すようになった(笑)。
カラオケでも歌う。ワタクシ、生まれも育ちも〜のセリフを照れながらキチッとやる。何度歌っても♪目方で男が売れるならの部分でウルッとなり、顔で笑って腹で泣くとの教えをぐっと噛みしめるのだ。
それにしても『男はつらいよ』とは見事でこれ以上のタイトルはない。大人になってから寅さんの魅力にハマったのは、このタイトルが示す世界からだろう。中高生の頃だってつらいことはたくさんあったが、それは男によるものでなかった。夢の挫折や心の葛藤は青春だからこそのつらさだった。年齢を重ねて家族を持ち、社会の責任を負い男はドンドンつらくなっていく。つらい男をひととき夢の旅に連れて行ってくれる寅さんに深く感情移入しながら、その振る舞いや粋、意地だったりやさしさに深く感銘を受ける。お馴染みのエンディングを迎えるとほんの僅かでも寅さんに近づきたいと思っている自分がいて、胸がスキッとしている。つらい日々に寅さんは最高の漢方薬だな。ジワジワと効きまくるもの。
僕の大好きなお正月と夏が舞台になるのもいい。当然ながらこの時期は観たくなる。叶うなら休みを取って真っ昼間にビールを呑みながら楽しみたいものだ。年齢を重ねたつらい男こそ満喫できる至福だな。