今の若者たちがどうかは知らんが、俺たち世代にとって夏は特別な季節だった。初めて女の子と手をつないだ。初めてキスした。初めて朝を迎えた。なんて数々の初経験が夏に多い。
初めて女の子に付き合ってと言われた中1のとき。付き合うってなにすりゃいいのかわからなかったガキで、一緒にいるのが照れくさくてあまりトキメキを感じなかった。そんな僕だったが、盆踊りに誘われて2人きりで歩いた初デートはなんとなくドキドキしたいい想い出だ。夏は大人の階段を容易に登れる季節なのだ。
東京人の若者の夏といえば、なんてったって新島である。高校時代は大ブームで、そこへ行くために男も女もバイトに励んだ。“友達と行く”と“誰もがみんな行く”という2つの大義名分を引っさげ、厳しい親を説き伏せる。稼いだ金をすべてバンド活動につぎ込む僕には無縁だったが、出かけた者たちの盛りに盛った話には興奮させられ妄想はひたすら大きくふくらんだ。そしてその妄想の矛先は、新島へと旅立った同級生の女の子へと向けられる。「えーっ、あの娘も新島しちゃったのかよ」と崩壊した日本語で驚愕しながら自身も崩壊したものだ。
新島=ラブラブアイランドという幻想をみんなが共有し、ひと夏の経験のために誰しもがバイトに励んだ。僕の高校の近くには、運送の日通が日雇いバイトを毎日受け付けてくれ、行けばありつけるから午後の授業をさぼって稼ぐ。我が校の男たちの間には「今日、日通しねえ?」なんてスラングがあった。そして女は「いらっしゃいませー」と笑顔で接客する。ボーイズ&ガールズは汗水垂らして新島を目指したのだ。ひと夏の経験のためならえんやこらな、カワイイティーンズたちだった。
時は流れて50過ぎの俺たちだ。枯れた男に初体験はもう残っちゃいないかといえばそんなことはない。いくつになっても年に1度の夏を特別なものにしたいのは、俺たち世代なら本能的な感情だろう。明日から夏休みの方は多いだろう。今宵は今年のひと夏の経験をイメージして眠るがよい。健闘を祈る!!
’80年代初頭,アイドル界には一時期『(山口)百恵フォロワー』というジャンルがあって,その中の1人にいた中野美紀さんというアイドルのデビュー曲『未経験』(’82年3月)が,まさにそういった世界感ですね~
♪経験者はスカーフを 短めに結びます 2年の夏の後は 急に増えます…
そんなことに縁がなく過ごしていた田舎の高校生には,『これって,ホントかよ?』とザワついて,『いつかは新島!』と思った時期もありましたが,夏は何かと部活が忙しくてね…
ビクターさんもそれなりに力を入れていたのですが,この曲も時代が早過ぎたんでしょうね…オリコンチャート外でしたから,全く売れませんでした。いい曲なんですがね。そのあと,ビクターもKyon2にシフトしちゃいましたが…
この記事読んでたら,頭をよぎったのがマーシー(田代まさし)の『新島の伝説』…(苦笑)
貴重なネタをありがとうございます。スカーフかあ。
健全な高校生に新島は必要ないですよね(笑)。