17歳のときに居酒屋でバイトを始めた。緊張して働いている初日に、なぜか濡れた雑巾を顔にぶつけられた。200席前後の大箱で板場を取り仕切る板長によって投げられたもので、長髪でチャラい僕が気に食わなかったのだろう。ものすげえ怖いおっさんだった。だが真面目に働く僕(ちょっとウソ)を徐々に認めてくれ、バイトではあり得なかった新メニューの試食と開発をさせてもらったり、包丁を教えてくれるようになった。
そんないいお付き合いをさせていただいていたある日「おい、お前音楽やっているんだよな。『ブルース・ブラザース』は観たのか」と聞かれた。タイトルは聞いたことはあるが観ていないと答えると、観なければダメだと言う。音楽が好きなんだったら必見だと。デブっとしてメガネをかけて髪の毛がほぼない。他の調理人たちから親父さんと呼ばれるにふさわしい風貌の男から、そんなハイカラな提案があるとは思ってもみなかった。怖い親父さんに言われたのだから観なけりゃならぬが、当時は今みたいに簡単にソフトにふれられる時代じゃない。名画座で観るのだって万年金欠男にとって大きな出費だった。
さて、ここで1つ自慢話をさせていただく。19歳になる夏のことだった。『ブルース・ブラザース』でストリートミュージシャンを演じた男、ジョン・リー・フッカーの唯一の日本公演を僕は観た。NHKホールでの興奮はいまだに忘れられない。あんなに泣いたライブは無く、興奮のままに会場で売っていた数日後のチケットを追加で手に入れたほどだ。万年金欠の財布をもこじ開けるスゲーライブだった。しかも前座がロバート・クレイだったのだからスゲー。
話を戻そう。『ブルース・ブラザース』にやっとふれたのは、親父さんから強く推された日から数年を経ていた。ジョン・リー・フッカーが出演しているのを知らず、その勇姿にふれられてビックリした。そしてこの映画に内包されているネタの数々こそが驚愕で、好き者同士で語り合ったら焼酎一升でもまったく足りないだろう。昭和55年の作品とのことだが、リアルタイムで観なくてよかった。15歳でふれてしまったらきっと廃人になっていたはずだ(笑)。そのくらいブルーススピリットが詰まっている。カーアクションもとんでもないスケールで、これだけでも十分に価値がある。先日久しぶりに引っぱりだして、これはあらためてタメ年諸氏におススメしたいと考えた。というのも、あの日の親父さんがちょうど50歳くらいだった。ああ、人生っておもしろいな。
『ブルース・ブラザース』は当時、今は亡き父親と観に行った記憶なんよね。
普通なら映画は友達と行く年頃なのに、音楽好きでもないオヤジとなぜ行ったかは思い出せん。
まだブルースなんて、シブすぎてよくわからなかったけど、とりあえず観とかなきゃ!という本能(?)が働いたような・・・。
で、観て大正解! 今でも家で酔っぱらうと観たくなるDVDのヘビーローテーションですわ。
当時はよく知らなかったJBやレイ・チャールズ他の面々がとてつもなくビッグネームだったことを徐々に知り、その都度スゲェ~!って感動したよね。
ベースのドナルド・ダック・ダンが後にクラプトンのツアーで弾いてたのを観た時もワオ!って感じでした。
劇中、盲目のレイがポスターを逆に貼るっていうブラックなギャグも陽気に笑えてしまう、ホント最高にゴキゲンな作品であり、あこがれの肌の色の違うアニキ達だぜ!
オオサカ☆ヤザワさん、お久しぶりです。親父さんにとっては、この作品が我が子に何かを与えられると直感したのでしょう、すばらしい。寅さんや戦争映画ばかりのウチとは大違いです。
DVDのヘビーローテーションは僕もまったく同じです。そして少しずつの発見を重ねたことも。なんてったって書いた通り、ジョンのライヴを観た時点で知らなかったんですから(笑)。