約1ヵ月前に出会ったカレーにすっかりハマった。“ネパール母さんの味をお楽しみください。”とのキャッチコピーだが、母さんの優しさなど微塵もなく、攻撃的で刺激的な一皿だ。夜営業はネパールとはまったく関係のないホルモン焼きの名店らしく、プリン体が気になる僕にはあまり縁がないかもしれん。
発見して1ヵ月でいったい何度お世話になっただろう。つい先日も出かけてきた。なんせこの一品しかないから、座ってすぐに出てきてささっと食えるのがいい。半分くらい食べ進めると汗がタラリとくる。辛いものは好きだけど弱い僕で、大汗をかきながら夢中になってスプーンを口に運ぶ。大盛りはサービスと挑発しているのに普通盛り(写真はその挑発に乗った初回)で十分になってしまったのが、大食漢の称号を欲しいままにしてきた僕にとってはちょっとさみしい。
つい先日、僕のすぐ後におそらく同世代で常連らしき男性が入ってきた。2人同時に出てきて至福のときを満喫し始めた。ベジファーストを貫く僕に対して彼はまったく気にすることなくバクバクといく。しかも堂々の大盛りで、こうなって来ると敗北者の気分だが仕方なしと舌鼓の乱打でその気分をごまかした。そしてやがて驚愕の瞬間を迎えたのだ。男は何を思ったか「ルーのおかわりください」と告げる。するとまるであたり前のように別皿に入れて持って来るネパール母さん。ちまちまとバランスを考えながら食っている僕はなんなのだ。
昭和のカレーはルーが少なかった。だからお家カレーがうれしかったのだ。バランスを考えなくても食べられるのは至福で、逆に茶店のカレーなんか食べ始めは福神漬け&白飯で食い進めることもあった。給食のお楽しみ、ソフト麺&ミートソースだってソースを珍重しながら食べたものだ。現代社会でこれらはずいぶんと改善されたが、やはり当時の癖から最後までバランスよく食べたい。貧乏臭い僕は後半を盛り上げるために最初ケチケチで食い進め、後半でどうだーっといく。が、彼はルーを頼んだ。今はどうだかわからんがカレーのCoCo壱番屋もルーのおかわりが認められていた。が、昭和のおっさんにそんなことはできないと、おかわりするヤツをうらやましく思いながらグッと堪えた。同じく、このカレーのナイスなサービスを知ったものの、僕は次回以降もちまちまとバランスを重んじることだろう。
なんとなくはしたなく感じてしまう。店のルールなのだから堂々と真似すりゃいいじゃねえかと若者達は指摘するかもしれない。が、おっさんは粋でいなせを貫こうとする。これをやせ我慢とも言うのだ。