期待する。期待される。人と人の間に行き来するこの感情が大きくなることを目指し、挫折したり成長させてくれたりを繰り返す。期待されるのは苦手だなんて言う奥ゆかしいタメ年男も多くいるだろうが、すべてが本心ではなかろう。頑張った人生の証のようなものかもしれない。だがときに人を傷つける。夢のような期待を他人に乗せて、それが叶わなかったときにモンスターになる心貧しい人間も少なくない。プロアスリートはその対象にされやすいから、やりがいと同じだけのプレッシャーと闘いながら自分のベストパフォーマンスを目指すのだ。そしてベストを尽くせたところで、結果がそのとおりにならないのもプロアスリートの世界だ。
昨日は全日本ロードレースの取材だった。付き合いのあるレーサーが多くいて、赤勝て白勝てみんな頑張れってな状態で現場にいるが、もっとも多く、そしてもっともたくさんの時間を過ごしている人間に肩入れするのは人の情で仕方なしだ。その意味でカワサキのライダー2人にどうしても感情移入してしまう。
1人はレジェンドと言ってよかろう、1971年生まれの柳川明選手だ。取材やイベントのステージを通じて何度も仕事をご一緒してきた。最近はステージで「結果を出さないと後がない」と口にすることが増えた。ジョークまじりではあるが、日頃より激しいトレーニングを積み重ね追い込み、衰えを見せない。昨日のレースでも序盤は2位で引っ張った。
もう1人はこのブログにもちょくちょく登場する若きエースの渡辺一樹選手だ。年間で5本前後のトークショーを2人で展開するようになって、今年でなんと3年目である。そのトークのために普段からコミュニケーションを取り、ずいぶんと深い付き合いになっている。今年はマシンが新しくなったからセッティングで苦労しているが少しずつ進化させているようで、僕はそれこそ期待をふくらませてサーキットに乗り込んだ。
トップとは仕上がりがほど遠かったが、4台の2位争いに2人とも絡んだ。とくに渡辺選手は2位で最終ラップに入り、よりによって2台に抜かれてしまい表彰台を逃がしてしまった。他人の僕がものすごく悔しかったのだから、本人の心中たるや…。だが、トップのヤマハとの仕上がりの差から、転倒を心配していたのも僕の気持ちのリアルで、これには冷静に対処したようで、アクティブながら安定した走りを見せてくれた。無事にゴールすることがなによりだと思ってしまうのはやれやれおっさんである。
彼にかぎったことなく、結果のでない者に対して心ない書き込みを見つけたりするとがっかりさせられる。ネット社会に順応できないおっさんはその暴力に耐えられず憤る。期待するのはわかるが、それは彼らの努力の賜物であるはずなのに、なぜかすり替えてしまう人が極々少数ながら存在する。もっとも、そんな些末なことに負けないタフなレーサーたちであり、渡辺選手だ。今週末は福岡で彼とトークショーがある。めいっぱい讃えたいと今から楽しみである。
実は予選しか行ってません(^^;
「TOP6サバイバル、すげぇコーフンしました。素晴らしいバトルを見せてくれてありがとう。8耐も応援します!」と、あるオッサンが言っていたと渡辺選手に伝えてください。
思うに、サッカーがメジャー化した頃から、日本は敗者に甘い、もっと叩くべし!みたいな風潮が広まった気がする。
サッカーもよく見に行きますが、サポーターの正義がとても気分悪い時があります。
暗黒面(とオレは思っている)まで欧州のマネしなくていいのにと。
遅ればせながら、コメントありがとうございます。昨日、渡辺選手に伝えましたよ。