久しぶりのオフだ。大安の今日は仲間の結婚披露宴なのである。会場は…、ウチ。というのも。
この2人、シンプルに家族だけで式を行ないお披露目はしないことにしたとのこと。いつご招待がと待っていたのだが、そういうことならせめてお祝いさせてくれと願い出た。籍を入れたのが去年であるが、ここまでヅルヅルといってしまったのは、『昭和40年男』の隔月刊にかき回されてしまったからだ。そして半年近くが経った本日大安に決まり、本来なら新居にうかがうのが筋だろうが、ごちそうしたいからと申し訳ないがウチでと納得してもらった。
一昨日から我が家は大騒ぎである。2人に想い出に残るようなおもてなしがしたい。披露宴をやらないのだから、これはささやかであるがお披露目のひとつであると、わけのわからぬ気合いを入れた。宴席料理ミーティングを行ない、僕は得意の刺身で勝負に出ることにした。すると当然ながら鯛は絶対に外せない。今はちょうど旬であり、また、こどもの日を控えて手に入れやすいはずだ。近所のスーパーではダメだろうから、買い出しには電車で蒲田まで出た。駅ビル3本に対してそれぞれ生鮮売り場があってしのぎを削っているから、なかなかいいものが安く手に入る。と、どこにもない。養殖は見つかったが、刺身でいただく鯛はずぇったいに天然である。天然と養殖の違いがこれほどでる食材を僕は他に知らない。刺身の場合は特に顕著で、別の食べ物と言っていいほどだ。それは卸している時から1発で違いがわかる。身が包丁にまとわりついてくるような弾力がある。それと養殖はにおうのだ。腹が臭い。これは致命的である。だから天然を求めてさらに川崎に移動して一軒、また一軒といくがやはり養殖しかない。なんで? 旬なのにおかしいなと首をひねった。あっ、そうだ、○○の地下の魚屋はよかったんだと思い出し向かった。実に魚屋6件目である。あったー!! 姿造りにするには少々小振りだが、1匹だけいたそれは宝石のように見えた。ルンルン。
ふっふっふ、僕のスーパーテクニックを持ってすれば小降りでもバッチリいきまっせ。松皮造りとコブ〆を拵えて、そのままの刺身との違いを味わってもらおう。鯛はめでたいで主役にして、紅白盛り合わせとするのだ。こうなったら徹底的に天然にこだわり、マグロも天然の本マグロを入手した。旬の鰹をズガーンと紅はこの2店で決まり、白はやはり天然物のヒラメをおごったよ。さらにイカ好きのやつに、ねっとりと分厚いのを入手できた。うむ、完璧じゃ。和食担当の僕は他に、椀と焼き物で勝負しようと思う。洋のものも手間ひまかけたロールキャベツがいい感じに鍋のなかで仕上りを待っている。
なんだか楽しいな。めでたいことだし、大切な仲間だからできる最高のことをしたい。それはあたり前にそうしている上で、喜んでもらおうとする気持ちって、実は自分の満足のためにやっている部分も多々ある。本をつくっているのと一緒だね。少しでも喜んでもらえる本にすることが、僕たち本つくりに関わるものの喜びなのだ。本日、僕はそっちをオフにして、料理人として全力で宴席に臨むのじゃ。包丁いっぽ〜ん、さらしに巻いて〜ときたもんだ。
追.本日、21:00〜23:00のMBS・TBS系列「世界の村がアリガトウ 命を救うニッポン人!」に、11日発売になる次号でインタビューした、吉岡医師が登場する。被災地に出向き医療活動をおこなった彼に同行取材を行なったそうだ。コレを見て次号を買ってね(笑)。