ちょっと業界チックな話になるが、今回僕たちが戦っている様子をご理解いただくという意味で説明しようと思う。苦しい〆切の現場報告でもある。
まずは発売日からの逆算だ。我々『昭和40年男』は問屋に対して中2日の納品を強要されている。これ自体には少々長い説明が必要なので省略するが、とにかく中2日を開けて僕たちは配本日と読んでいる。5月11日発売であるから普通なら8日だが、暦の赤い日、つまり休祭日は動いてくれず7日となる。そこに納品するために印刷所にデータが入る日が通常中3日で、5月の3日に渡ればよい。だが、ここでも赤い日は動いてくれないから29日に繰り上がってしまうのである。
ここでだ。えーっ、うっそーとなったのだ。僕たちだって言葉くらいは聞いたことがありますよ。お正月進行と並んで夏休み進行、ゴールデンウィーク進行という“言葉”はね。でも、それほど長くないにしろ出版人生で、ゴールデンウィーク進行や夏休み進行は実際にはなかった。広告マンの世界にはあるよ。クライアントや自分たちがキチンと休むからね。でも編集者は別で誰も休まない。印刷所だって通常は動いているわけで、とくにゴールデンウィーク回りは印刷所としては期首の繁忙期になるわけだから、止まるはずが無かった。
ところが、今回の震災で商業印刷が激減していて、赤い日が止まることになってしまった。うちの本だけのために工場を動かすということはあり得ないわけだ。そりゃそうだよ、工場を動かすとなると当然多くの人間が必要なわけで、それはそのままコストであるからそんなの印刷会社サイドは負担できない。僕らが負担するからまわしてくれって言ったら、1冊何千円で売らなければならなくなる。そんな額じゃそもそも誰も買ってくれるわけない。どう転んでも29日にはデータを印刷所に渡すことになる。まだまだ逆算がある。その前段階でデータを作る人間たちの作業時間がいる。僕たちは文章や写真をバラバラにして入れていき、デザインやレイアウトに落とし込んでくれる人間とグチャグチャとページを作っていく。ほぼ出来上がると誤字脱字探しを中心としたチェック作業を経て、最終的に印刷に不具合が出ないようなデータへと落とし込みの作業が生じる。様々な人の手を介して印刷所に入っていくのである。ねっ、もうギリギリなのはご理解いただけるでしょ? 僕の強烈な焦りは伝わったでしょうか? ガンバルっす!!
写植時代に隔週誌と月刊誌を並行してやってた身としては3号入稿/2号初稿/1号色校がGWや年末は同時やら連続が普通で、自分で紙焼き作ったり写植屋さんに打ってもらった細長い文字を台紙に物理的に切って貼ってとやってたので、DTP時代は楽になったんだろうと思っていました。タメ歳がする同じ仕事でもバブル期と今じゃまるで別物(^_^;)
DNP内にあった、修正の多い「不良校正紙」の晒しもの掲示板の常連でございました。そりゃ新ネタは最新号の色校に突っ込み、順送りに次号初稿も直し、入稿したばかりの分は写植打つだけ無駄になってましたからねぇ。当時はレイアウト先行だったので、ネタ未定で入稿時は毎回罫線だけっていうレギュラーページも半折持ってました(笑)。
いいですね「不良校正誌」ですか。同じ経験をした僕としては、写植時代にはもう戻りたくないですよ。ピンセットとスプレー糊、カッターですね。