カレーの誘惑に勝てない昭和40年男。

つい先日このブログに、ランチ事情が悪い浜松町界隈にしては珍しい、いつもガラガラの昭和のラーメン屋に行こうとしたら屋台カレーの誘惑に負けた…、なんて書いたばかりだ。てなわけで、その借りを返そうと昨日のランチタイムにそのラーメン屋に向かった。近所の店には行列ができているってのに、やはりここはガラガラだななんて入店しようとしたのだが、ちょいと先にやけに長い行列を見つけた。並ぶつもりはないがどれどれと見に行くと新しくできた中華の店で、また客が奪われたななんてちょいと気の毒に思った。そしてそのおかげで発見があった。この街で働くようになってずいぶん経つのに知らないそば屋を見つけたのだ。いわゆる街のそば屋さんで、ショーケースの中にホコリまみれのサンプルが並んでいる。結果、またまた昭和のラーメン屋を裏切った僕だ。

まさしく昭和な店内は、おっさんばかりでほぼ埋まっていた。流行っぽいうまさはなくてもいい。普通でいいのだと受け入れる、懐の広い男が増殖しているのではないか。もちろんうまいものを求めてちょっと気合いを入れる日もある。それはそれだ。

カレーセット昨日は夏直前のような陽気で、冷たいそばにしようと思っていたところ、目に飛び込んできたのはAとBのセットだ。そば屋の罪ともいえるカレーセットである。この店はそばとカレーのどっちをハーフにするかでAとBを名乗る。僕はカレーがハーフのBをオーダーした。待つことしばし。おっさんたちのすする音と昼のバラエティを映すテレビ(残念なのはブラウン管じゃない)の音に包まれて昭和に浸る。そしておばちゃんが「お待たせしました」と運んできたこの盆に頷く。箸を割る前から味の予想がついたそのとおりに、コシと香りに無縁のそばと濃いめのつけ汁。そしてこれぞそば屋というカレーに“昭和の普通の味研究家”の僕の心は踊りっぱなしだった。

味の満足は普通ながら、昭和の香りに強い幸せを得て納得のランチだった。そして帰り道で目的だったラーメン屋の前を通る瞬間に心が微妙に動く。ありゃ、また裏切っちまった。それも、またまたカレーの誘惑に負けてしまったキレンジャーをこよなく愛する昭和40年男だった。

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