赤坂に真空管アンプでアナログレコードを聴けるバーを見つけてすぐさま入ったのは、新年会の2次会でのことだった。リクエストが次々に入れられて楽しく過ごし、つい先日もやはり2次会に使わせてもらった。バーにしては広めの店内は満席で、席が空くまでしばしスタンディングで呑まされたほどだ。僕らが座った後にもスタンディング状態が続き、前回といいどうやらかなりの繁昌店だ。
入ったときにかかっていたのはレッド・ツェッペリンの『天国への階段』で、ちょっとバーとは似合わないなと苦笑していたところ、続けてきたのがディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』だ。ご丁寧に『ライヴ・イン・ジャパン』バージョンである。さらにさらにレインボーの『キル・ザ・キング』ときたからもう笑いは止まらない。どこぞのハードロック好きのグループのこりゃあ犯罪だ(笑)。1人静かに呑んでいる客はおらず、3〜5名のグループ客が多い。こうした偏った選曲をしたグループを考察するのも楽しい。
酔っているからか大名曲が多い。前回来たときは、そんな中でアバの『ダンシング・クイーン』がかかった瞬間に歓声が上がり、店の空気が変化したのを感じた。僕ら3人はそんな1曲を狙う。客の年齢層は前回も今回も昭和40年男くらいがメインだろうが、選曲の流れみたいなのは前回と微妙に異なる。少なくとも前はハードロックはかからなかった。僕はデヴット・ボウイで流れを変えようと『モダン・ラブ』を入れたが、すでに『レッツ・ダンス』を入れた方がいたのは、僕と同じく流れを変えたかったのだろう。メン・アット・ワークを打ち込んだらおもしろいかなと『ダウン・ワンダー』を入れたりと、客同士の楽しくも激しい駆け引きが延々と続く。命名すれば『赤坂おっさんロックバトル』である。
そしてきっとハードロックグループが入れたと思われるクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』が入り、このバトルにひとつピリオドを打たれた。夜遅いバーに響き渡るクイーンサウンドは、どのパートをとっても正しくない(笑)。センスのかけらもないこのセレクトだが、多くのおっさんたちが大音量で流れるこの曲に心を奪われた。こんな派手な曲が赤坂のバーで流れているのは、くどいようだがまったく正しくない。が、ハードロックもクイーンも中坊の頃聴きまくった僕が楽しいのは違いなく、バトルに敗れながら心が喜んだ夜だった。
終電間際になると戦士たちは次々に家路につく。バブルじゃあるまいしタクシーなんか使えないおっさんたちの遊技場は、深夜はあまり儲からないだろうな。
行ってみたい・・・。
バトルに参加したい・・・。
遠すぎまっせ。
そうですよね。いっそ320さんがこんな店を開いちゃったらいかがでしよう(笑)。