落語家・立川談笑さんに見た下町。

副編の小笠原が数日前興奮気味にここに書いていた立川談笑さんの
インタビューに同行してきた。本当は担当したかったのだが、今回は
震災の影響で予想の付かないラグビーボールのような動きが求めら
れていて、仕方なく担当を軽くしているのだ。だがたとえ担当できなく
ても取材現場にはいた方がいい。そのページをどこに置くべきかが見
えるだけでも、台割り(本の設計図だね)を作っていてイメージできるから。

インタビューは面白いものだった。小笠原も忙しい中でしっかりと予習し
てきたようで、フムフム頷きながら聞いていた。インタビュー取材現場の
同行では、基本的に途中で突っ込んでは行かないようにしている。担当
本人が終了とした後に、補足程度で質問をするくらいだ。ところが突っ込
んでしまった部分がある。話題がもんじゃに行き、月島の話になった時
である。思わず同意しながら狂喜乱舞してしまったバカな俺です。

東京江東区、下町出身だと言う。下町の中でもいろいろあって、しょうも
ない下町というのが談笑さん曰く自分の生まれ育った街だということだ。
よーくわかる。同じにおいの下町である東京都荒川区出身の僕である。
それを告げるとバッチリのコンセンサスで、さらにもんじゃに話が及ぶと
駄菓子屋で焼くものという、これもバッチリであった。月島のような高級
料理はもんじゃでない。その辺のことをよく知らない人にもんじゃの話を
して、相手が「ああ月島とかですよね」なんて言おうものなら、その方、大
やけどである。僕から散々な説教を受けるはめになるのである。「もんじゃ
ってーのはな、とことん安い庶民のもんなんだよ。たいがい50円、せいぜ
い100円ときたもんだよ。わかったかい?」ってなもんである(いつの時代
じゃ)。そして荒川区では家族でホットプレートを囲んで焼く家も少なくなかっ
た。大阪人がみんなたこ焼き機を所有しているのとどことなく関係があり
そうで、まったくない。家でやるもんじゃだから略して「イエモン」と昔ブロ
グで書いたら、アクセスがスゲー上がったのもどうでもいい話だ。

そんな(どんな?)談笑さんから同じにおいを感じてしまうのは、下町人間の
野生の感なのである。実は出会った瞬間に感じていた。ただ大きく異なる
のは向こうは頭脳明晰でコッチはバカ。向こうは運動神経抜群でコッチは
ダメダメ。向こうは人気者でコッチは血のにじむ努力でようやく人の笑いを
誘う程度。その辺は雲泥の差ではあるが、だがやはり下町っ子独特の連
帯感はある。一口に東京下町と言っても、ランクみたいなものがある。浅草
や上野のような観光客を呼べる下町から、千駄木や谷中のように渋い上流
階級下町、北千住や錦糸町のような歓楽下町、そして僕や談笑さんのよう
なしょうもない下町の大まかに四つにカテゴライズできる。僕のような専門
家になるともっと細かくわけているのだが、そこら辺は専門書を見ていただ
きたい(笑)。

落語界におけるハカイダーであるそうだ。いいじゃないの、きっと昭和40年男
なら頷けるんじゃないかな。伝統芸能の中で、独創性や革新へと突き進みな
がら生きていく姿勢をたっぷりと感じることができた。今回のタメ年のスゴイやつ
も見逃せないよー。

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