僕の住む多摩川沿いには、長く続く桜並木がある。今がまさに満開で、
昨日はそれはそれは多くの花見客が訪れていた。上野や千鳥ヶ淵と
いった、見事な桜並木というより、素朴な風情である。なんとなく不揃い
で木の間隔とかもいい加減な感じで、上野公園を歩いて感じる「おおーっ、
見事じゃー」に対して、何となく原風景を感じる「日本に生まれてよかった
のー」という桜なのである。しかもここの桜は満開が遅い。昨日で九分
咲きくらいで、明後日くらいからハラハラ舞う最高の花見具合なのでは
ないだろうか。土手を境にして陸側の桜は週末の風でずいぶん散って
しまったから、川沿いで気温が低いせいなのか、3〜5日くらいの違い
がある。
日本全国を桜前線が北上していく。せまい日本なんて僕にはまったく
イメージできないっす。刹那に美しく、そして舞い散る桜に心をゆだねた
瞬間、ほんの少しでも同じ気持ちになれて、繋がっていけたらなんて
思ってしまう。傷ついていない地にいるエゴかもしれないけど、やっぱり
桜はいつも優しいのである。ささやかなとか、ゆるやかなとか。そんな
心を取り戻すべきなのか、答えを出すにはまだまだ時間がかかるけど、
今後日に日に強く問われていくだろう。戦後の復興は素晴らしかった。
でもそこで置き忘れてしまったものがあるのだということだ。今回の
復興では取り戻しながら進んでいくべきなのかもしれないと、美しい
桜を眺めているとそんな気持ちが強くなってゆく。