久しぶりにこのCDを引っ張り出した。トトのドラマーであり、多くのミュージシャンの演奏にも参加したジェフ・ポーカロの仕事集である。こんな企画ものが成立するのだから、いかに偉大だったかは洋楽に明るくない諸氏にもご理解いただけるだろう。しかもこのシリーズは2枚をリリースしたのだから驚愕である。
17曲で構成されていて、ビックネームのミュージシャンたちの名曲名演ばかりが並ぶ。マイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット(邦題いいね)』のようなファンキーナンバーがあるかと思えば、俺たち世代にしっくりとくる、クリストファークロスの『オール・ライト』みたいなAORナンバーもある。マイケル・マクドナルド、アレサ・フランクリン、ダリル・ホール&ジョン・オーツなどなど、様々なジャンルのミュージシャンたちのナンバーが次々に飛び出す本当に楽しいアルバムだ。
中坊の頃にギターの練習で弾きまくった、ラリー・カールトンの『ルーム335』のドラムも彼だったのは当時意識しておらず、このアルバムにふれて知った。小気味いいドラムだなとは思っていたが、僕にとってこの曲はギターの上達のためだけにあったから、バックのメンバーなんて興味がなかった。今になって聞いてみるとドラムプレイの素晴らしさや楽曲のよさ、練り込まれたギタープレイに関心させられるが、ともかく当時の僕にはそんなのどうでもよかった。指を動かすトレーニングのためだけの曲としてとらえていたのだから若さとは愚かなものよ。
そしてなんといってもトトでのプレイが素晴らしい。とくに『ロザーナ』のドラミングは奇跡だ。これぞジェフ・ポーカロと誇示してくれるから、その他のセッションワークにおける職人技に唸らせるというニクイ構成に思える。楽しいままに聴き進めていくと、トトのギタリスト、スティーブ・ルカサーによる追悼曲『ソング・フォー・ジェフ』で幕を閉じる。これだけ説得力のあるコンピを僕は知らない。感謝に値する1枚である。