魚屋さんより呼び起こされた昭和の記憶。

「スーパーの刺し身はなんだか気持ちが悪いわよね」とはお袋の口癖だった。ラップにくるまれて置いてあるのは「いつ切って、いつから置いていたのかわからない」というのが口癖の理由だ。肉もそうだった。僕の実家そばの常磐線三河島駅近くにあった仲町商店街や三ノ輪の商店街(現在はジョイフル三ノ輪)に出かけても、スーパーで生鮮を一切買わないのがお袋流だった。すべて専門店で買い、スーパーは日用品を求めて入る場所だった。

昭和の商店街はそれぞれの店に活気があって全体にエネルギーがあふれていた。八百屋では威勢のいい声が響き、魚屋は次々に魚をさばく親父さんと売りまくるその奥さんのコンビネーションがスパークする。肉屋は次々に肉を切りつつ、コロッケやメンチなどを揚げ続ける。どこもテキパキという言葉がピッタリとハマる職人たちの店だった。夕方の商店街は人が多くて疲れるくらいだったが、ついていってカゴ持ちをすればなんらかの褒美がもらえるから喜んで出かけた。

刺し身のわさびと、そんな昭和を思い出させる、我が家の近所の下丸子商店街には元気な魚屋がある。9時前から店は開いていて、親父さんが忙しそうにしている。午後になると日持ちのする加工物や干物が徐々に並び始め、やがて切り身がバシッと展開される。そして夕方になると真打ちの刺し身が登場だ。そうそう、これだよ魚屋ってのは。冒頭のセリフを思い出させる。そしてずっと忘れていた、このピンクの皿に幼少の魚屋の記憶がさらに強くよみがえった。最近見ることがなかったが、魚屋で買ってきた刺し身はコイツにわさびが盛られている。かつて親父がうまそうに刺し身を食うのを見ながら、大人になるとわさびの世話になるんだなあなんて家族団欒シーンへとしばし時間旅行した。

現在の商店街にかつて親しんだパワーはないが、昭和の香りを楽しみながら極力利用するようにしている。今日はお休みの方が多いでしょうから、ゆったりと商店街の応援に出かけてみてはいかがでしょう? あっ、下丸子商店街はお休みだ(笑)。

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1件のコメント

  1. コイツにわさびがテンコ盛りだったね。
    魚屋に夏に西瓜が冷やしてたりして、刺身と一緒に買って帰って食うと実に甘くて美味かった。
    懐かしい思い出。
    いまの近所に魚屋がなく寂しい限り。

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