打ち合わせで赤坂に出向き、思わず写真に収めたのは現在の浜松町に来る前のオフィスだ。2006年までここで奮闘した。いやあ、懐かしい。人生を積み上げるとそんな想い出の場所ってヤツが増えてきて、出くわせばいろんな想い出がフラッシュバックする。みなさんもいろんな場所にそれぞれの想い出があることでしょう。かつて親しんだ場所があるのは、生きてきた年輪の証で、暖かい気持ちになれてよいものだ。だがその逆、消失してしまうとものすごくさみしい。
この日もいい気分になった後がそうだった。ちょうど昼時だからと当時しょっちゅう通ったそば屋に出向いた。そこのお気に入りメニューの数々は忘れるはずはなく、今日は何にしようなんてワクワクしながら店の前に着くとない。ないないない。3年ほど前にやはりここの近所で仕事があり寄った時には、おばちゃんが元気に迎え入れてくれた。「久しぶりねえ」なんて声をかけてくださり「近所で仕事があったもので」なんて答えたりして、たったそれだけの会話ながら繋がった気がしたものだ。この日も同じような会話を交わすはずだったのに…。
想い出の場所が増える一方で、それが無くなるさみしさが増えてしまうのも50歳ならではのこと。まだあるかななんて向かうときはあると信じて向かうのであって、そうでないことは想定していないからよけいにさみしさが大きい。
もう1つ、かつての事務所から見えた奥にそびえる建物もさみしいことこの上ない。かつて、恋人たちのバブルデートを支えた赤坂プリンスホテル、通称“赤プリ”が普通のカタチのビルになって建設中だった。以前の40階建てのビルはそれは凝ったデザインで、恋人たちがこぞって行たがりそうな、赤坂においてはシンボリックなビルだった。仕事が終わり、ボロボロになって駅へと向かう正面にそびえてたホテルは週末になると、そして遅い時間になるほど灯りが点いている窓の数が増える。「ああ、今宵も幸せなカップルたちがたくさんいるな」なんて眺めながらやさぐれていた(笑)。新しい商業ビルへと向かって完成が近いが、かつてのゴージャスな雰囲気は漂っておらず、こう言っちゃ悪いが極々普通のビルだ。
平成の後退に思えてしまい、これまたさみしい気分にさせられた。人生の年輪によって、気持ちが複雑に交錯するのですなあ。