昭和40年男たちの “タイガーマスク体験” としては、おそらくアニメと新日本プロレスにおける初代タイガーの印象が強く、もしかしたら原作マンガには触れていない方もいるかもしれません。しかし、こちらのマンガは夢中で読んだという方も多そうです。
梶原一騎原作・原田久仁信作画の『プロレス スーパースター列伝』です。1980年から『週刊少年サンデー』誌にて連載されていた作品で、ザ・ファンクス、ブッチャー、アンドレなど、レスラーたちの過去を振り返る記事でプロレスファン予備軍たちの愛読書となっていました。ところが、1981年4月に初代タイガーが登場すると、翌年2月より本作にて<夢の英雄! タイガーマスク>編がスタート、その内容は途中から現在進行形となり、実際のリング上での戦いを誌面で展開するという白熱のオンタイム形式がとられます。当時、家庭用のビデオデッキが普及する前の時代であり、あまりに速い動きのタイガーマスクの技の数々をリアルに再現した本作は劇的な人気を獲得していったのです。
埼玉県某市にて取材に協力してくれた原田氏も、まだビデオデッキを所有しておらず、すぐに購入してタイガーの試合を全部録画、それを見ながらマンガを描いたとか。「タイガーの連載中は部屋がビデオだらけになっちゃった」と語り、まさにテープが擦り切れるまで見たからこそあの臨場感ある描写が可能になったことを明かしてくれました。一部で人気を集めていた本作ながら、『サンデー』誌のアンケートで上位に入ることはなかったそうですが、タイガーの連載が始まると人気も急騰し毎回ベスト3に入るようになったというから驚きです。
そして、やはり気になるのは梶原一騎氏のこと。自宅に呼ばれることもあったという原田氏は、当時「最強の格闘家は誰か」「本当に強い格闘技は何か」といったことをいつも話題にしていたという梶原氏について「本当に格闘技が好きな人でした」と語っています。そんな梶原氏が入れ込んだキャラクターが実在のレスラーとして人気を集め、さらにそれを自身の原作で再度マンガにしようというのですから、愛情の深さがうかがいしれるというものです。そして、<タイガーマスク>編は、他レスラーが数回にとどまる中、異例とも言える27回もの長期人気連載となり、タイガー人気の一端を支えたのでした。他にも、毎回気になっていた “猪木談話” や、作品内におけるタイガーの正体の真相についても触れており、タイガーファンなら必見のインタビューとなっています。
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