ここ近年のクリスマスイブは、このかけそばをいただくことが多い。会社のすぐ近くに立ち食いの小諸そばがあり、昨日は夜7時前に入った。券売機でかけ240円也を買い「そばでお願いします」と兄ちゃんに渡す。店内には次々と男たちが来ては背中を丸めてそばをすすり、あっという間に出て行く。1年で一番キラキラしたイブの夜をこうして過ごすことで、無言のまま「お互いに忙しいですな」なんて気持ちのシンパシーを感じつつ、ニヒルな男を演じたりするのだ。
この行動のモチーフは中島みゆきさんの『狼になりたい』である。夏の夜明け間際の吉野家で繰り広げられる人間ドラマがなんともいえず好きだ。そしてあるイブの夜、原稿がうまく進まずそれまで何日も苦しんでいた。なんだってこれほどキラキラした夜に苦しんでいるんだとへこんでいた。手っ取り早く腹を満たそうと思ってここに入ったところ、実に多くの男たちが背中を丸めているじゃないか。
次の瞬間頭の中に、季節は真逆ながら『狼になりたい』が流れた。ここでの気持ちの揺らぎは的確な言葉が見あたらず情けないが、大切なことをいくつも思い起こさせてくれたのは違いない。みゆきさんの生み出した世界観のおかげであり、あったかいかけそばのおかげだ。その気持ちを忘れないように、以来イブの夜はこうして過ごすことが多い。
な~んてね、仕事にメドがついていればドンチャン騒ぎするくせにと自分をあざ笑ったりしている。そしてクリスマスはやっぱりチキンだと、今日の昼は豪勢に鳥南蛮だよ。鴨といけないところがやや貧乏性である。それにしても、かけも鳥南蛮もどっちもうまかった。豊かな気持ちにしてもらえて感謝している、今この時だ。
みゆき嬢のララバイ。
悪女にしても、狼になりたいにしても。
多感な十代のオラ達に突き刺さりましたな。
あの頃のユーミンのキラキラした世界観に対して、このみゆき嬢のなんともいえない世界を好んで貪り聴きましたなぁ。
いわゆるビートルズにいかなかった人種みたいな感覚でしょうか。
ハハハ、ビートルズにいかないけどみゆきさん。まったく同感ですね。