『細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音をつくってきた』が4日、DU BOOKSから発売されました。著者は40年におよぶ細野氏の音楽活動を見つめてきたミュージシャンの鈴木惣一朗氏(ワールドスタンダード、Soggy cheerios等)。
『イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)』のメンバーとして活躍した細野氏のことは、ほとんどの昭和40年男が認識しているでしょう。また、我々世代より少し上の方々であれば『はっぴいえんど』の印象が強いかもしれません。
その細野氏の“音づくり”に迫ったのが同書であり、骨格をなすのが細野作品に携わった歴代エンジニアたちへのインタビューです(もちろん、細野氏自身も登場します)。
なぜ、エンジニアなのか。「それは、テクニカルなハードウェアの使い方、エンジニアリングの話をしながらも、ぼくと同じように細野さんの音楽に、しかも、その現場にいて圧倒された方々と話すことで、ある真実が見えてくると思ったから。きっと、細野さんの音楽の最大の魅力や楽しみ方を教えてもらえるに違いない」と、著者の鈴木氏は説明します。
細野氏がデビューした1960年代後半から現在まで、音楽はめまぐるしく変わってきました。歌謡曲からフォーク、そして日本のロック創世記の音づくりへと移り、スタジオ機材やコンソールも当然のように変遷し、80年代に入ればアナログからデジタル時代に突入。音楽ジャンル的にもテクノ、アンビエント、トランス…。つまり、レコ―デングの発展史にかかわりながら、あらゆるジャンルの音楽を咀嚼してきたのが細野晴臣というミュージシャンなのです。彼の録音作品をたどった同書を開けば、音楽家やエンジニアの葛藤を理解でき、未来への音楽(家)にも思いが及びます。
現在の音楽シーンは明らかにライブ、配信主導。レコードやコンパクト・ディスクなどの録音芸術は風前の灯という声も聞こえ、昭和40年男の中には一抹の寂しさを感じる方も多いのではないでしょうか。だからこそ、「細野氏の音楽を通して、音楽を録音するという行為の尊さ、録音された音楽を聴く楽しさ、パッケージングされた記録物、それを手にしたときの多幸感を、今一度噛みしめてみたいと思った」という鈴木氏の思いに同意しますし、時を超えて我々に語りかけてくる細野作品、その秘密や背景は一読に値すると思います。
これ、むちゃくちゃ面白くて夢中になって読みました。