現在発売中の『週刊文春』に「さらば、帰らぬ人よ」との巻末ページがあり、今年旅立った方々の写真が並んでいる。暮れならではの企画で「ああそうか」と神妙な気持ちになる。企画のトビラページを務めているのは、横綱北の湖が優勝トロフィーをかかえている写真だ。62歳だったから、やはり早すぎたな。水木しげるさん、川島なお美さん、愛川欽也さんなどなど、俺たち世代がお世話になった方々が並び、じっくりと眺めた。
このなかにGKデザイングループの榮久庵憲司さんの名前があった。誰もがピンと来る名前ではないかもしれないが、キッコーマンの卓上醤油のデザイナーで、あの瓶を知らぬタメ年はいないだろう。ヤマハのバイクを創業から手がけたことで、僕にとっては身近な存在である。彼の意志を継いでヤマハの傑作バイクを次々に生み出している、現在GKダイナミックスの社長 一條 厚さんとは懇意にさせていただいていて、尊敬する先輩の1人だ。
8ページで構成されている中で、偶然とはいえ僕の血肉になっている2人が同じページにいるのは少々驚いた。榮久庵さんのすぐそばにB.B.キングがいるのだ。キレイなブルースを弾くギターリストだった。ブルースをメジャーな音楽に変えた人だと言って過言でなかろう。多くのミュージシャンに影響を与え、僕もその末裔のようなものだ。
榮久庵さんの葬儀は今年の春に、会社のそばにある増上寺で行なわれた。これまで参列させていただいた葬儀の中でもっとも大規模のもので、厳かに執り行われた。そのたった半年ほど前に彼の講演会に出席して、深い感銘を受けたばかりだった。
もしも彼がいなかったら、ヤマハのバイクは現在の姿となっていなかっただろう。大好きな企業であり、僕の仕事において大切なメーカーだ。その礎を築いた故人だから、僕にとって大きな大きな存在である。
今年も暮れていく。今一度、悲しみに向き合うのは大切なことかもしれない。皆さんにとっても、つらく悲しい別れがたくさんあったことでしょう。乗り越えて、僕らは1日1日を大切に生き抜きましょう。