先日、姫路に出かけてきた。東京モーターショーでカワサキのデザイン部門の方より「そうだ、姫路のデザイナーズナイトに来ませんか」と声をかけていただき、そいつはありがたいと1つ返事でうかがうことにしたのだ。…と、昨日の続きになるのでコチラに目を通していただけるとうれしい。
30年以上続くこの集いにメディアの人間が入るのは初めてのことだ。こんな光栄な話になったのは昨日お伝えした通り、各メーカーのデザイン部門の偉いさんと懇意にさせてもらっているからだ。
この集いは隔年開催で『東京モーターショー』の後に行なわれる。ショーのモデルを見たデザイナーたちが語り合う夜として、長く続いている由緒正しい会合だ。今回は2部制で1部はスズキとヤマハのトップデザイナーによる講演がメインで、懇意にしている4人の中の2人が講師だった。スズキのOBで今もデザインの探求を続ける高次氏と、ヤマハのデザインといえばこの人ありと高名なGKダイナミックスの社長、一條氏である。お付き合いの深い2人が壇上で語っているのは、なんとも嬉しい気分にさせられた。その後、各メーカー代表の若手によるデザイン議論も行なわれ2部の懇親会へと会場は移った。
だが気が重いのがひとつあった。数日前に突然、さも気軽に「懇親会でスピーチせよ」と命じられたのだ。世界の一線で戦う大人数のデザイナーを相手になにを語れというのじゃ。が、頼まれたら基本は引き受けた方がいいと、加齢とともに強く思うようになっている。と同時に、頼まれることの重みが増していることも加齢によるものだろう。
気分は完全アウェーである。しかもついさっきまでなごやかな歓談が交わされていた会場で、突如紹介を受けてシーンと静まり返ったのにはまいった。結婚式の主賓かよと思うような注目の中、僕は壇上へと上がった。メディアの立場で感じている、ユーザーさんのデザインに対する意識が高まっていることを伝え、僕らが取材したいバイクとはプロダクトとしての個性と、メーカーの主張、そして日本車という誇りにあふれているものだとした。さらに若いデザイナーにちょっとした説教を語り、この修羅場をなんとか乗り切った。終ってみればまた1ついい経験を積めたことに感謝だ。
翌日には親交のある4人よりスピーチに関するコメントが寄せられ、おおいに涙した昭和40年男である。