ずーっとずーっと会社に缶詰なのだ。外の世界はどうなっているの? お陽様が
街をキレイに照らしてくれるの? それとも雨なの、風なの? なんて気分であり
ながらもがんばっているところ、今日は朝からヘリコプターの音がけたたましい。
そう、東京1のビッグイベントの開催日である。オフィスから歩いてすぐのところを
ランナーたちは走る。しかも社の人間が1人抽選に当たったとのことで、ちょっぴり
応援に出かけた。編集部の者と2人で、目立つようにと我が社のバイク雑誌
『タンデムスタイル』の登りを持参してコースへと行った。
すごいことになっていた。天気もいいしあたたかいからかな、沿道はビッチリと人で
埋めつくされている。僕たちがコースに着いたときはすでにトップランナーが行ってから
1時間近く経過しているにも関わらずこれだもの。いやあ、ランナーの帯もすごく太いよ。
ここは13㎞地点で、僕たちが着いたときの時間からの感じだと、5〜6時間完走ペース
のエンジョイランナーたちだ。ほとんどのランナーがまだまだ元気のいいところで、笑顔
のランナーが多い。まさにアマチュアスポーツの祭典だね。
ボランティアで手伝っていたおじさんに話を聞くと、今回の応募はぬぁんと33万人だって。
げーっ、なんじゃそりゃー。しかもあたると1万円の参加費を払うということは、もし全員
走らせたらそれだけで33億円の売り上げですよ、うぎゃー。年末ジャンボ前後賞合わせ
て11本だーって、わけのわからん計算をしながら待っていた。
仮装ランナーが多いね。時節柄かパンダちゃんが声援を集めていた。と、驚愕の男が
うつむき加減で走ってきた。キリスト様が十字架を背負っている〜。しかも本人の体より
少し大きめのサイズで見応えも十分。もし背負ったまま42.195㎞を完走したら、きっと
キリスト様もお喜びであろう。
石原さんがオリンピック誘致にあれだけ一生懸命だったのは、この沿道を見ればきっと
わかるはず。経済効果うんぬんで説明していたけど、この光景が石原サンの1番望んだ
ものだろうな。スポーツによってこれだけの連帯があるのだから。東京マラソンを機に
ブームになり、マーケットが作られたのだから結果的には大きな経済効果も生んだのだ。
批判もたくさんあるだろうけど、なにか起こせばそんなもんは必ず起こる。第1回の
マスコミの叩きようったら、日頃の恨みがごとく集中砲火のようだった。でも、極寒の雨
という最悪のコンディションながら、完走したランナーたちはおおむね満足だったから
翌年もまたその翌年も申込者が増える一方だ。 傍観者がガタガタ言ったところで
当事者の感動にはかなわないもので、あれだけの人数のランナーが沿道とともに
スーパーイベントの一員となった共有感が大きかったのだ。マスコミ(いい加減な)の
負けで、事実の勝利といったところだった。僕は走る人間だからひいきしてしまうけど、
あの距離を走ることが自分に与えてくれるものはとても大きくて、それは今の人生の
一部になっているといっていいほどだ。東京マラソンが始まるまでは、一部のスーパー
ストイックな人が楽しむものだと認識されていたフルマラソンが、7時間という緩い制限
時間と東京のど真ん中を閉鎖する感激で、それまで縁遠いとされてきた人をグッと引き
寄せ、やってみようかなという気にさせたのはすごいことだと常々思う。健康ブームで
片付けるのは早計っす。そんな単純なものでなく、もっと根深いものだと思うのですが、
ちょっとうまく説明がつかない。ただね、感動というのはいつでも誰にでも平等に得る
チャンスがあって、それを取りにいく数や大きさで人間の豊かさやおおらかさとかに
少しずつ差がついてしまう。自分だけのホンの小さなものかもしれないけれど、様々な
種類の感動を得たいものですね。
トップの人はもうとっくにゴールしているだろうけど、一番苦しいところにいる人もたくさん
いるはずだ。がんばれがんばれ、もう少し。そして見事完走したみなさん、おめでとう
ございます。今夜は、かんぱーい!!!!!!!って、僕は原稿と闘います。