昨夜はお世話になっている作家の方と共に酒を飲みました。人生の大先輩として、出版の世界に生きる人間として、いろいろと教えてくれた自分にとっては先生のような方で、今も時々酒を酌み交わす間柄です。この一年くらいは東急目黒線の武蔵小山駅が僕らのホームグラウンドになっていて、それは間もなく着手される駅前再開発で昔ながらの飲み屋街がなくなってしまうから。昭和の匂いぷんぷんの、狭い路地にならぶ居酒屋、スナック、パブ、立ち飲み屋…。なんともいえない雰囲気はちょっと他にないいかがわしさがあります。
「密集市街地の解消と合わせて敷地の共同化により魅力ある複合市街地を形成する」という、いかにも正しいという感じの理由でこの魅力的な飲み屋街が消えていく。確かに、もし火事になっても消防車が入る余地はないほどの密集具合なので、仕方がないのかもしれないけれど…来年1月の着工に向けて、どの店も営業を終了し始めています。昨夜行った店も一件はこの9月に、もう一件は10月に店を閉め、移転や再開発後の再開予定はないとのこと。うーん、寂しい限り。パリは古い街なみを残しているんだぞとか、街には「闇」が必要だ、と語る先輩と共に、失われる昭和飲み屋街の最後の風情を楽しんだのでした。『昭和40年男』を作っていると、古き良きものを残すことの重要さを痛感させられる場面がよくあります。この街が、よくある味気ないショッピングモールみたいなものにならないことを祈るばかりです。
またまた長い前置きになってしまいました。今日も9/11に発売されたばかりの最新号の紹介です。みなさんは『1・2の三四郎』読んでいましたか? 弱気を助け悪しきをくじく正義の味方や血と汗と涙といった、それまでのヒーローとはまったく異なる、新しいヒーロー像をつくった作品でした。なんせ主人公の三四郎がスケベでもてない! ヘラヘラしていて、大口をたたくばかりで、闘魂と純情だけがとりえの三四郎なのに、なぜかカッコいい。そんな不思議なヒーロー像をつくった小林まこと先生にインタビューがかないました。記事を担当したのは、昭和40年生まれのライター・カベルナリア吉田さん。なんと、三四郎のおかげで人生が変わったと豪語するほどの三四郎ファンで、それまでなよなよしたもやしっこみたいだったのに、三四郎を読んでからは本当の男のかっこよさに目覚め、レスリングを始めたという人物。今も日焼けした筋肉むきむきな姿からはとても想像できないのですが、それほどの三四郎ファンならばと、取材を依頼したのでした。
その結果は素晴らしいものになりました。ファンならではの細部へのこだわりと、作品へのリスペクトと愛がひしひしと感じられる原稿は、きっと昭和40年男の共感を得られるものになっていると思います。小林まこと先生も脱帽するほどのファンぶりで、取材現場も大盛り上がり。小林先生いわく、「マンガ家は本当に理想のオリジナルな主人公はひとりしか生み出せないと思う。それは自分自身の理想像だから」というような趣旨のことを言っていました。そして小林先生にとっては三四郎がそうだったのです。そんな素敵なコメントを引き出せたのもやはりカベルナリア吉田さんの作品への愛の力が大きかったといえるでしょう。また週刊連載なのに連載1回あたり8日かかっていた…とか、それなのに月刊誌なども担当したなどといったびっくりするようなエピソードや、連載当時の当時のマガジンの編集についても話してくれており、連載当時に読んでいた側としては興味津々の内容ばかりです。
というわけで、昭和40年男のかっこよさの基準の一端をつくった『1・2の三四郎』の記事が掲載されている『昭和40年男』最新号は、全国の書店・コンビニで発売中です!!
猪木が何度も登場しますしね。しかも意味なく(笑)。それがまたいい。
ストロング・スタイルの地味だけどカッコイイ、プロレスリングを教えてくれた漫画でもあります。