いかりや長介さん気分を満喫した昭和40年男。

宝温泉ここは日曜日のイベント会場から近いということで、前日に宿泊させてもらった温泉宿だ。朝食つきで3,600円で宿泊できた。朝早い出発だったから朝食がどのような内容かはお届けできないが、温泉は素晴らしく素泊まりと考えても十分すぎるお値打ちだった。正真正銘の源泉掛け流しで湯量は豊富で、湯舟は家族風呂6つを含む全部で9つときたもんだ。風呂上がりはお肌ツルツルで自分のそれと思えないほどだった。部屋はきれいとは言わないが、必要最低限は完備していて十分だった。

イベントの滞在時に宿で夕食をつけることはほとんどしない。地元の店で会話を楽しみ、その地のことを知るのがなによりのごちそうだからだ。ここは温泉街で飲食店は少ないが、事前に調べたところ居酒屋と食堂があるのを確認できたから、翌日のイベント会場への移動を考えて決めた。こうした見知らぬ街の宿泊は僕らイベント担当者にとってさまざまな経験の積み重ねにもなる。あまり栄えていない街でも、宿泊施設がある街ってのは当然ながら迎え入れる姿勢がある。この最低限てのがユニークだったり、時には驚愕の世界だったりするのだ。

極上の風呂を浴びて、居酒屋に出かけると予約でいっぱいだと断られた。この日は祭りとぶつかっていて、地元の役員の方々が占拠してしまっていた。そもそも温泉街ってのは、訪れるほとんどの客は宿で食事をとるからスナックは多いが居酒屋は少ない。仕方なくこの街で唯一の食堂に行った。一応看板には酒と書いてあり、ここ以外に選択肢はなく入ってみた。テーブルに腰掛けた婆さんが睨むように迎えてくれた。「コイツは相当ヤバいぜ」と、旅慣れた僕の心は逆に踊ってしまう。「ビールをください」と告げると返事もせずにサーバーへと向かう。「やっぱりヤバいぜ」と、ますます心躍る。

遠慮がちな品数のメニューから「ヤッコください」と頼むと「まだ来てない」と返される。「?」来てないとはなんのこっちゃと思いながら「なにが出来ますか」と聞くと「言ってくれと」と返される。「ニラ玉はできますか」と続けると無言のまま店の奥に入って行った。ここでこの婆さんが作るんじゃなく、おそらく厨房を担当する人間がいることを知った。少しホッとして婆さんを待っていると「大丈夫」とだけ言う。「もろきゅうもお願いします」と告げると、またも無言で奥に入って行きしばらく出て来ないと思ったらニラ玉の登場だ。「イケルじゃない」と箸を進めていると、買い物かごを持った女性が入ってきて婆さんに渡す。受け取った婆さんがぼそっと「豆腐が来た」と言う。そういうことかと「ならばください」と答えた。

ヤッコなんだかいい時間が流れているぞ。チョッピリドリフの「だめだこりゃあ」ネタを彷彿とさせ、いかりや長介さん気分だ(笑)。旅の相方もこんな店が嫌いじゃない。果たしてもろきゅうのオーダーが入っているのかは確認したら男が廃る。2人はその行方に期待しながらニラ玉で過ごした。するともろきゅうをもった厨房担当の爺さんが登場だ、パチパチ。ちゃんとオーダーは聞いてくれていたのだ。ならば返事してほしいと望むのも男が廃るってもんだ。念願のヤッコも揃い、飲み物を焼酎に変えてゆるりと過ごした。

続いてのオーダーがしたくなり、いくつかラインナップされている定食のおかずだけを2つ頼んでみることにした。面倒で悪いだろうから揚げ物2品を選んで伝えると婆さん、おもむろに電話をとり「レタス1個、持って来て頂戴」と電話の向こうに告げた。揚げ物の皿にレタスが載っていたことは言うまでもない。

その後、いいペースで焼酎を呑んでいくと一杯ごとに婆さんの機嫌が悪くなるような気がしたのは気のせいだろうか。きっとこれは親心だなといい解釈をして、早々に引き上げたのだった。またも素晴らしい経験が出来た、大分県九重町宝泉寺温泉街での一夜だ。

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2件のコメント

  1. 持ってますね(^^)v
    ブログのネタの為に舞い降りた天使だね(^-^)/
    いつか載るのでしょうか?遊園地(^-^)

    • 持ってるでしょう(笑)。言われてみればあの婆さんは天使ですな。

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