昭和40年生まれの推理作家・新野剛志の新作『明日の色』が発売されている。
妻子に逃げられたダメ男が務める低額宿泊所の施設長。貧困ビジネスに食い物にされる入所者の面倒を見ていたが、とある入所者の絵に目をつけ、彼をアーティストとして売り出そうとギャラリーを開く――。スカイツリーに踊る下町に起きる奇跡を描いた本作は、実は新野ならではの作品だ。なぜなら彼は元ホームレスだからである。
新野は大学卒業後、6年間の旅行会社への勤務を経て、退職し、キャンプ道具を背負い放浪生活に入る。それはほぼ失跡状態のホームレス状態だったようで、社会に戻るのにどうするかを考えたときに、小説なら鉛筆と紙があればできると考え、そこから“作家活動”をスタートさせたのだそう。
99年に『八月のマルクス』で江戸川乱歩賞を受賞し、見事に作家デビューをはたすと、2008年には『あぼやん』で第139回直木賞候補に。同作は2013年1月に連続ドラマ化もされた。近著に『素人がいっぱい』(東京創元社)、『パブリック・ブラザース』(双葉社)、『美しい家』(講談社)、『カクメイ』(中央公論新社)などがある。タメ年作家が執筆した新作に注目したい。
このコーナーでは昭和40年生まれの活躍を紹介。どんな些細なことでも我こそは!という昭和40年男はぜひ『読者投稿欄』から投稿を!